安衛法改正で建設会社が直すこと

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2026年以降の対応整理

安衛法改正で建設会社が直すこと

  • 30秒でわかる要点まとめ

    ・ポイント:2025年5月公布の改正労働安全衛生法は、個人事業者対策、メンタルヘルス、化学物質、機械、高年齢労働者の5領域で、建設会社の安全管理を段階的に見直す内容です。
    ・お読みいただきたい方:元請会社、一次下請会社、専門工事会社、協力会社を使う建設会社の経営者。
    ・リスクへの備え:2026年以降の施行日を確認し、現場の安全衛生ルール、協力会社への指示、教育記録、機械点検、任意労災や使用者賠償責任補償の確認を前倒しで進めることが重要です。
    ・この記事で分かること:2026年以降に建設会社が確認すべき5つの改正ポイント。

  • 改正安衛法はいつから変わるのか

    今回の改正は、2025年5月14日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」によるものです。建設会社にとって重要なのは、改正内容が一度に始まるのではなく、2026年から2027年にかけて多くの項目が段階的に施行され、さらに公布日から3年以内・5年以内に政令で定める項目も残されている点です。

    まず、公布日からすでに動いているのは、建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者について、施工方法、作業方法、工期、納期等に関し、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮する規定です。これは、単に現場内の安全管理だけでなく、無理な工期や危険な作業条件を前提にした発注・受注そのものが問われる方向にあることを示しています。

    施行時期ごとに見ると、建設会社が確認すべき主な流れは次のとおりです。

    時期 主な確認事項 建設会社の実務対応
    公布日施行 注文者等の配慮 無理な工期・危険な作業条件の見直し
    2026年1月1日 特定自主検査・技能講習修了証等の不正防止 資格証・検査記録・レンタル機械書類の確認
    2026年4月1日 個人事業者等、高年齢労働者、機械等の制度見直し、治療と仕事の両立支援(努力義務) 一人親方・協力会社・持込機械の管理
    2026年10月1日 作業環境測定等、化学物質関連の一部 SDS、ばく露、保護具、教育記録の確認
    2027年1月1日 災害発生状況の報告関係 個人事業者等を含む事故報告ルートの整理
    2027年4月1日 作業場所管理事業者、特別教育等 連絡調整・教育・記録体制の整備
    公布日から3年以内 50人未満事業場のストレスチェック関係 実施体制・外部委託先・相談窓口の検討
    公布日から5年以内 危険性・有害性情報通知制度の履行確保 資材・化学物質情報の入手体制確認



    2026年1月1日には、特定自主検査や技能講習修了証の不正防止に関する規定が施行されます。建設現場で使う車両系建設機械、フォークリフト、高所作業車などは、特定自主検査記録、技能講習修了証、レンタル機械の点検書類、協力会社の持込機械の確認方法が形式だけになっていないかを見直す必要があります。

    2026年4月1日には、個人事業者等に関する多くの規定、高年齢労働者への配慮、機械等に関する制度見直しなどが施行されます。特に一人親方や個人事業者が労働者と同じ場所で作業する現場では、元請・上位下請の指示、作業間調整、立入禁止、退避、保護具使用などを、従来の「雇用している労働者だけ」の感覚で扱うと不十分になる可能性があります。

    2026年10月1日には、作業環境測定の対象拡大など、化学物質による健康障害防止に関する仕組みの一部が施行されます。塗装、防水、接着、洗浄、溶剤使用などがある会社は、SDSの保管だけでなく、ばく露の把握、作業環境、保護具、教育記録まで確認する必要があります。

    2027年1月1日には、作業従事者の災害発生状況に関する報告規定が施行されます。2027年4月1日には、作業場所管理事業者の連絡調整、個人事業者等による機械の定期自主検査や特別教育に関する規定が施行されます。

    2026年・2027年施行分については、厚生労働省から政令・省令・通達等が順次示されています。一方で、50人未満事業場へのストレスチェック関係など、公布日から3年以内または5年以内の政令で定める日が残る項目については、今後の公表内容を確認する必要があります。未確定部分があることは、対応不要という意味ではありません。

  • 建設会社が見るべき5つの改正ポイント

    施行日は分かれますが、建設会社の実務では、次の5つに分けて確認すると整理しやすくなります。

    ・個人事業者対策:一人親方や個人事業者も、労働者と同じ場所で作業する場合は、安全衛生上の保護対象や義務の主体として位置づけられる方向です。元請や上位下請は、作業間調整、危険箇所の指示、保護具、退避、立入制限、違反時の是正指示などを、誰にどこまで伝えたか記録できる状態にしておく必要があります。
    ・メンタルヘルス対策:50人未満の事業場では、ストレスチェックが当分の間は努力義務とされていましたが、その特例を終了する改正が予定されています。施行日は公布日から3年以内の政令で定める日とされているため、実施方法、外部委託先、結果の取扱い、面接指導につなげる体制を早めに確認しておく必要があります。
    ・化学物質管理:作業環境測定の対象拡大、個人ばく露測定の位置づけ、通知対象物に関する情報通知の履行確保などが進みます。建設業では、塗料、接着剤、溶剤、洗浄剤、防水材などの取り扱いが関係しやすいため、資材選定、SDS、保護具、作業手順を一体で確認する必要があります。
    ・機械災害防止:特定自主検査、技能講習、特定機械等の製造時検査や設計審査、車両系機械運転技能講習などの制度見直しが含まれます。レンタル機械や協力会社持込機械についても、誰が確認し、どの記録を現場に残すかが実務上の論点になります。
    ・高年齢労働者対策:事業者は、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理その他の必要な措置を講ずることが努力義務となります。罰則はありませんが、国が定める指針に基づいた取り組みが求められます。段差、照明、重量物、暑熱、墜落・転倒、長時間作業など、年齢によりリスクが増えやすい作業を洗い出すことが必要です。

    ここで注意すべきなのは、今回の改正を「一人親方だけの話」「ストレスチェックだけの話」と狭く見ないことです。建設会社にとっては、現場に入る人、使う機械、扱う化学物質、作業条件、年齢構成まで含めて、安全衛生管理を広げていく改正と捉える方が実務に合います。

  • 保険で確認すべき範囲と自己負担

    安衛法改正への対応は、法令対応だけで終わりません。現場で事故が起きた場合、会社には労災対応、元請・発注者への説明、協力会社との責任整理、再発防止策、行政対応、工期への影響などが同時に発生します。

    任意労災を確認する場合は、死亡、後遺障害、入院、手術、通院補償保険金だけでなく、休業補償、使用者賠償責任補償の有無を確認しておく必要があります。商品によっては、ハラスメント・不当解雇等に関する雇用慣行賠償責任補償の有無も確認対象になります。特に、個人事業者や一人親方、役員、下請作業員がどこまで被保険者に含まれるかは、契約内容や特約により異なります。

    第三者賠償責任保険では、工事中の対人対物事故、引渡後の対人対物事故、争訟費用、受託物の損壊などの範囲を確認します。ただし、労災事故に伴うすべての費用が任意労災や賠償責任保険で当然に対象となるわけではありません。工期遅延に伴う追加費用、売上減少、行政処分対応費用、ブランド毀損対応費用などは、保険で必ずしも対象とならない費用です。補償対象は契約内容、特約、事故状況により異なるため、証券単位で確認が必要です。

    また、今回の改正は、元請と協力会社の安全衛生ルールにも影響します。協力会社の安全教育、作業手順、資格、機械点検、保護具、健康管理、緊急時連絡体制を確認しないまま現場に入れると、事故後に「誰が何を確認していたのか」が説明しにくくなります。協力会社管理は、契約条件、安全衛生、現場指示が分断されると事故後の説明が難しくなります。下請取引上の注意点については、関連コラム「建設会社が見直したい5つの下請取引NG行為」もあわせて確認しておくと整理しやすくなります。

    執筆者の意見

    この改正は、建設会社の安全衛生管理が「雇用している労働者中心」から「同じ場所で作業する人全体」へ広がることを意味します。実務上は、法令の施行日を追うだけでなく、現場入場時の確認、協力会社への指示、機械点検、化学物質管理、事故時の報告ルートを社内手順として残せるかが問われます。安衛法改正への対応は、安全書類を追加することではなく、事故後に会社が説明できる体制を作ることだ。15年以上にわたり建設会社の事故対応に関わる中で、そう確信している。任意労災や使用者賠償責任補償も、加入の有無だけでなく、被保険者の範囲、支払限度額、免責金額、対象外となり得る費用まで証券単位で確認してほしいところです。制度改正が段階施行される今の時期こそ、2026年以降の対応表を作り、現場・総務・経営者で同じ認識を持つことが欠かせません。


    前田朗伸(まえだ あきのぶ)
    株式会社イカリエージェンシー(1956年創業/AIG損保 AMA認定代理店)
    損害保険トータルプランナー/AIG Executive Risk Manager ※AIG損保リスクマネジメント制度 最上位認定
    建設業の労災・賠償・工事保険を専門に、実務15年以上。契約実績300社以上。

    あわせて確認しておきたい記事

    「熱中症対策の「体制・手順」義務化で建設現場が直すこと」
    https://www.e-kojihoken.com/basic/column/post-39/
    「改正建設業法後の見積・契約・工期の直し方」
    https://www.e-kojihoken.com/basic/column/post-31/
    「第三次担い手3法とは?建設業法改正の要点」
    https://www.e-kojihoken.com/basic/column/post-26/
    「建設業の墜落防止は段取りで決まる」
    https://www.e-kojihoken.com/basic/column/post-28/

  • よくある質問(FAQ)

    Q1. 改正安衛法は、すべて2026年4月1日から始まるのですか。

    A1. いいえ。施行日は内容ごとに分かれます。公布日、2026年1月1日、2026年4月1日、2026年10月1日、2027年1月1日、2027年4月1日、公布日から3年以内または5年以内の政令で定める日があります。建設会社は、2026年4月1日だけでなく、2027年以降の改正も含めて対応表を作る必要があります。

    Q2. 一人親方や個人事業者も、会社の労働者と同じ扱いになるのですか。


    A2. 雇用契約上の労働者になるという意味ではありません。ただし、労働者と同じ場所で作業する個人事業者等について、安全衛生上の保護対象や義務の主体として位置づける改正が進みます。元請・上位下請は、作業場所の危険防止、連絡調整、指示、是正、教育、機械点検などを、現場実態に合わせて整理する必要があります。

    Q3. 従業員50人未満の建設会社もストレスチェックの準備が必要ですか。


    A3. 必要です。これまで50人未満の事業場ではストレスチェックは努力義務とされていましたが、今回の改正ではその特例を終了する方向です。具体的な施行日は、公布日から3年以内の政令で定める日とされています。実施方法、外部委託先、結果の取扱い、面接指導につなげる体制を早めに確認しておく必要があります。

    参考

    厚生労働省『労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)』(2026年6月閲覧)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/an-eihou/index_00001.html

    厚生労働省『労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(令和7年5月14日付け基発0514第1号)』(2026年6月閲覧)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001497674.pdf

    厚生労働省『労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて』(2026年6月閲覧)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001513749.pdf

    最終確認日
    2026年06月27日

    ※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。

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承認番号:26G021
承認日 :2026年6月9日

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