労災事故と企業責任

労災事故から労災訴訟に

後遺障害2級に認定。元請、下請の両方に高額の損害賠償請求。

ある体育館の建築工事中、4メートルの高さの足場から転落。後遺障害に認定された職人は協力会社の新人さんだったとします。
前まででしたら国の労災から治療費や休業補償が給付。
それに加えて協力会社で加入している傷害保険から後遺障害保険金を受け取って、誠意を感じてもらって一件落着。
ですが、今はインターネットの検索で「労災 弁護士」と入れるだけで弁護士のホームページが出てきます。
それだけでなくテレビでは法律関係の番組が視聴できる時代になりました。
情報が簡単に取れ、従業員さん・職人さんの意識は昔とは大きく変わってきております。
さらに昨今、高額な労災訴訟が目立ち、企業に1億円を超す高額な賠償命令が裁判所から下されたというニュースがマスコミを賑わしています。
ひとたび労災事故が起きると賠償額が高額なだけに、企業にとっては大きな損失となり、事業の継続は困難になります。
ここでは、労災事故から企業を守るための傾向と対策についてご説明させてください。

労災リスクへの備え

労災リスクへの備え

労災リスクも高額賠償時代へ!

建設業は1日あたり41件の労働災害が発生しています。

※厚生労働省「平成28年業種別事故型別労働災害発生状況」より引用

その上、死亡災害が最も多く発生しているのは建設業。

死亡災害を含めた重大事故は数多く発生しておりますが、建設業での死亡災害の発生件数は各業界でも群を抜いて多く発生しています。
下記の厚生労働省が発表したデータをご覧いただくと一目瞭然です。

平成28年 業種別
死亡災害発生状況

平成28年 業種別 死亡災害発生状況(円グラフ)

※厚生労働省「業種別死亡災害発生状況」から引用

建設業での死亡災害の発生件数は他の業種を大きく引き離し発生しています。

平成28年 建設業 事故の型別
死亡災害発生状況

平成28年 建設業 事故の型別 死亡災害発生状況(円グラフ)

※厚生労働省「平成28年業種別事故の型別死亡災害発生状況」から引用

墜落・転落から死亡災害につながることが多いですが、飛来・落下や激突され等でも発生しています。
あらゆる視点からの安全対策を実施することが大切です。

企業には賃金を支払う義務だけでなく、安全配慮義務もあります。

従業員の義務・企業の義務(イメージ)

安全配慮義務

労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
(例)安全環境の確保、安全な作業の指示など

「労働契約上、使用者は労働者の安全に配慮しなければならない。これを怠ると民法415条(債務不履行)により損害賠償しなければならない。」

元請だけでなく下請であっても責任が問われてしまいます。

(1)元請の責任

元請業者には、下請の労働者に対して自社の労働者と同様に安全配慮義務が生じます。

元請業者の安全配慮義務(イメージ)

民法上の責任

元請と下請従業員・事業主・一人親方との間に実質的に見て指揮監督関係があった場合、元請は下請従業員・事業主・一人親方に対して使用者としての責任を負い、安全配慮義務があるということになります。

(2)下請であっても孫請との関係は、元請と下請の関係に

図1元請と下請の関係(イメージ)

建設省計画局長通達「元請・下請関係合理化指導要領」(1978年11月30日)

「下請契約における注文者を元請、請負人を下請」と指導要領では規定しています。
図1のように1つの工事において複数の元請・下請関係がある場合、全体の請負関係の中では1次下請業者であっても、2次下請業者に対する元請であることを要領で明確にしています。

最近の一つの例として3次下請業者の従業員さんの死亡事故が発生し、遺族が民法上の安全配慮義務に違反したとして関連の業者さんすべてを裁判所に訴えたケースもありました。

債務不履行責任(安全配慮義務)の場合 時効10年

※不法行為責任が問われる場合もあります。
※権利を行使しうる時(災害発生時)から起算します。

労働災害の高額賠償事例

建設業において発生した高額賠償の事例がこちらです。

下請作業員の事故も元請の責任

A社の下請作業員Bが業務中、機材の下敷きに。
障害等級1級に認定されるほどのケガを負ったのはA社の安全配慮義務違反だとして、BがA社に損害賠償を求めた訴訟。
地裁はA社の債務不履行・使用者責任を認定。A社に約48,000,000円の支払いを命じた。
(1984年に実際にあった判例より)

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