
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント:分電盤内の配線接続作業では、二次側の配線が未接続でも、一次側ブレーカーが「入り」のままなら感電リスクがあります。
・お読みいただきたい方:電気工事、設備工事、改修工事、仮設電源工事で、分電盤や配電盤まわりの作業を管理する現場責任者の方。
・リスクへの備え:作業前の「切」確認、作業内容・電圧・設備の状態に応じた適切な検電器具による確認、感電防止用保護具、注意喚起表示、オブスタクルの設置、低圧電気取扱業務に関する特別教育の実施状況を、現場ごとに確認してください。
・この記事で分かること:分電盤作業で感電事故を防ぐための確認点を、事故前・事故時・保険確認の3段階で整理できます。
分電盤作業で起きたヒヤリ・ハット
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」には、分電盤内の配線接続作業中に感電しそうになった事例が掲載されています。業種は電気業、作業の種類は配線接続作業です。
事例では、工事用分電盤内の二次側スイッチに配線を接続しようとしたところ、二次側の配線はまだ接続されていないにもかかわらず、一次側のブレーカーが「入り」になっていました。作業者がそのまま二次側ケーブルを接続していれば、感電につながる危険がありました。
この事例で見落としてはいけないのは、「二次側が未接続だから安全」とは限らない点です。分電盤の作業では、作業対象の線だけでなく、一次側、開閉器、隣接する充電部、仮設電源の状態まで含めて確認しなければ、危険源が残ります。
厚生労働省の事例では、感電防止のための対策として、特別教育の受講、オブスタクルの設置、感電防止手袋の着用、注意喚起マーク、ブレーカー切の確認、作業前の活線確認が挙げられています。ここでいうオブスタクルは、接触を防ぐための障害物・防護物として理解すると、現場の区画や接触防止措置に落とし込みやすくなります。
現場責任者に必要なのは、「作業者が分かっているはず」という前提を置かないことです。ブレーカーの状態、検電の有無、保護具の着用、作業範囲の明示は、経験者の判断に任せるだけではなく、着手前の確認手順として固定する必要があります。
なぜ「切」の確認が抜けるのか
このヒヤリ・ハットの原因として、厚生労働省の事例では、作業前に「切」の確認をしなかったこと、検電器具で活線でないことを確認しなかったことが挙げられています。
ただし、実務上は検電ドライバーに限らず、作業内容、電圧、設備の状態に応じた適切な検電器具を用い、作業対象とその周辺が活線でないことを確認する必要があります。
分電盤作業では、作業前の段取りが進むほど「もう電源は落ちているはず」という思い込みが入りやすくなります。特に、複数人で仮設電源を扱う現場、元請・下請・協力会社が同じ盤に関わる現場、休憩や中断を挟んだ後の再開時は、誰が、いつ、どのブレーカーを確認したのかが曖昧になりやすい場面です。
現場で最低限そろえたい確認は、次の5点です。
・作業対象のブレーカーが「切」になっていること
・作業内容、電圧、設備の状態に応じた適切な検電器具で、作業対象と周辺が活線でないこと
・感電防止手袋など、作業内容に応じた保護具を着用していること
・誤投入や接触を防ぐ表示、札、区画、オブスタクル、注意喚起マークがあること
・低圧電気取扱業務(交流600V以下・直流750V以下の電気作業)に該当する作業者について、特別教育の受講状況と記録を確認していること
ここでいう特別教育は、すべての電気に関する作業を一律に対象とするものではありません。労働安全衛生規則では、低圧の充電電路(対地電圧50ボルト以下のものを除く)の敷設若しくは修理の業務や、配電盤室・変電室等区画された場所に設置する低圧電路のうち充電部分が露出している開閉器の操作の業務など、一定の危険または有害な業務が対象とされています。自社の作業が該当するかは、作業内容、電圧、充電部の露出、作業場所の条件を分けて確認する必要があります。
感電事故後の負担と保険確認
分電盤作業中の感電が実際に労災事故になった場合、会社側では、労災保険の手続きだけでなく、休業対応、代替人員の手配、元請や発注者への報告、工程調整、再発防止策の見直しが必要になります。死亡事故や後遺障害を伴う事故になれば、使用者責任や安全配慮義務をめぐる賠償問題に発展する可能性もあります。
感電事故が発生した場合は、二次災害を防ぐために安全を確保したうえで通電状態を確認し、救急要請、元請・発注者への報告、事故状況の記録、関係者の証言整理を行います。保険確認では、事故日時、作業内容、被災者の所属、契約関係、現場指示の有無、保護具・検電・教育記録の有無が確認対象になります。
保険面では、まず、被災者が政府労災の対象となる労働者に該当するか、一人親方や外注先の場合は特別加入の有無を含めて、業務中の事故として整理できるかを確認します。そのうえで、任意労災の死亡・後遺障害・入院・手術・通院補償保険金、休業補償、使用者賠償責任補償などが関係する可能性があります。ただし、実際の対象可否は契約内容、特約、被保険者の範囲、事故状況により異なります。
注意したいのは、事故に伴う会社の出費がすべて保険で整理できるわけではない点です。工期遅延に伴う追加費用、売上減少、行政対応費用、信用低下への対応費用、再発防止のための社内教育費用などは、任意労災や使用者賠償責任補償で当然に対象となるものではありません。補償対象は契約内容や特約により異なるため、事故前に証券単位で確認しておく必要があります。
「高所作業車事故と会社の備え」でも、事故後の費用は治療費や賠償金だけでなく、工期や信用にも波及する点を整理しています。感電事故では、特に検電記録、ブレーカーの状態写真、作業指示書、特別教育の受講記録、保護具の使用状況が、事故後の事実確認で重要になります。事故を起こさない管理と、起きた後に会社がどこまで自己負担を負うかの確認を分けて考える必要があります。
この事例は、感電事故の入口が特殊な作業ではなく、作業前確認の抜けにあることを意味します。
実務上は、ブレーカーの「切」確認と適切な検電器具による確認を、作業者個人の注意力ではなく、着手前の手順として現場責任者が確認できる形にすることが問われます。
この分電盤作業のリスクは、事故が起きた後に治療費だけで終わらず、休業対応、工程調整、元請・発注者への説明、再発防止策まで広がる点にあります。
弊社は、電気作業を含む建設現場では、任意労災と使用者賠償責任補償の有無だけでなく、被保険者の範囲、下請作業員の扱い、支払限度額、免責金額を事前に確認しておくことが欠かせないと考えます。
実務上は、安全手順と保険確認を別々に管理せず、事故が起きたときの報告経路、初動対応、証拠保全、証券確認までを一つの流れで整えることが現場責任者に求められます。

前田朗伸(まえだ あきのぶ)
株式会社イカリエージェンシー(1956年創業/AIG損保 AMA認定代理店)
損害保険トータルプランナー/AIG Executive Risk Manager(ERM)※AIG損保リスクマネジメント認定・最上位
建設業の労災・賠償・工事保険を専門に、実務15年以上
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よくある質問(FAQ)
A1. あります。二次側の配線が未接続でも、一次側ブレーカーが「入り」のままなら、作業の進め方によって感電につながる危険があります。作業対象だけでなく、一次側、隣接する充電部、仮設電源の状態まで確認する必要があります。
A2. 一律に十分とはいえません。厚生労働省の事例では検電を行わなかったことが原因として挙げられていますが、実務では検電ドライバーに限らず、作業内容、電圧、設備の状態に応じた適切な検電器具を用いる必要があります。経験の有無にかかわらず、作業前に作業対象とその周辺が活線でないことを確認する手順が必要です。
A3. すべてが当然に対象になるわけではありません。任意労災や使用者賠償責任補償で確認対象となる費用はありますが、工期遅延に伴う追加費用、売上減少、行政対応費用、信用低下への対応費用などは対象外になり得ます。契約内容、特約、被保険者の範囲、事故状況を個別に確認する必要があります。
参考
厚生労働省 職場のあんぜんサイト『ヒヤリ・ハット事例 分電盤内の配線接続作業中、感電しそうになる』(2026年6月閲覧)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0255.html
e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』(2026年6月閲覧)
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
厚生労働省『特別教育を必要とする業務』(2026年6月閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000473271.pdf
最終確認日
2026年06月20日
※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。
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