
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント
高所作業車の事故は、運転操作だけで起きるとは限りません。設置面の確認、作業計画、必要な教育、器具の確認、異常時に作業を止める判断が重なることで、防ぎやすくなります。
・お読みいただきたい方
建設会社の経営者、役員、安全担当者、現場責任者、少人数で現場を回している事業者の方。
・リスクへの備え
作業前は、「設置面」「作業床高さに応じた教育区分」「器具の確認」「中止ルール」の4点を整理しておくことが重要です。あわせて、事故後の負担に備えて、「従業員災害への補償」「会社の法律上の損害賠償責任への備え」「第三者被害への備え」を分けて考えておく必要があります。
・この記事で分かること
高所作業車事故で、会社として先に固めておきたい4つの実務対応
事故の概要と、会社が見落としやすい管理上の課題
今回取り上げるのは、高所作業車を使った大木の枝切り作業中に、機械が後方へ転倒し、作業者が地面に激突して亡くなった事例です。
こうした事故は、単に「転倒した」「落ちた」と結果だけで見てしまうと、再発防止に必要な視点を外しやすくなります。
会社として見るべきなのは、その前の確認や判断です。
たとえば、地盤が沈下しやすい状態ではなかったか、機械を水平に設置できる状況だったか、敷板などの措置が必要な場面ではなかったか、異常や不安の声が出たときに作業を止める運用になっていたか、といった点です。
高所作業車を用いる作業は、法令上、作業計画の対象として整理されています。
つまり、あらかじめ作業場所や機械の状況を確認し、作業方法を定め、関係する人に伝え、状況が変われば見直すことが前提になります。
高所作業車の転倒事故は、操作した人の行動だけではなく、作業計画、教育、指示、設置条件の確認など、現場全体の管理状況も検討対象になりやすい事故類型です。
事故を「本人のミス」で終わらせると、次の事故を防ぐための手がかりを見落としやすくなります。
なぜ重大事故を防ぎにくいのか――会社として先に決めるべきこと
この種の事故を防ぎにくくする要因は、1つではありません。
設置条件の確認不足、必要な教育区分の確認不足、危険のサインが出たときに作業を止める仕組みの弱さ が重なると、重大事故につながりやすくなります。
まず押さえたいのは、法令上の位置づけです。
高所作業車を用いる作業は作業計画の対象であり、事前に作業方法を定め、関係労働者に周知し、状況変化に応じて見直すことが求められます。
次に、教育区分の確認です。
高所作業車の運転業務は、作業床高さ10m以上は技能講習、10m未満は特別教育の対象です。
なお、ここでは必要となる教育区分を簡潔に整理しています。
現場では、「経験がある人」かどうかではなく、その機械の作業床高さに応じた教育を受けているか を確認することが大切です。
また、墜落制止用器具については、法令上の扱いが機種や構造、作業条件によって異なる部分があります。
そのうえで実務上は、着用の有無だけでなく、種類、接続方法、点検状態まで確認しておくこと が重要です。
器具を使っていても、選び方や使い方が合っていなければ、形だけの対策になりやすいためです。
会社として先に決めておきたいのは、作業を止めるための標準ルールです。
地盤、敷板、傾斜、設置状態、風、荷重、機械の作業床高さ、必要な教育区分、器具の確認、異常時の中止権限 を、現場ごとの感覚に任せず、会社の共通ルールとして整理しておく必要があります。
「少し不安だが今日は進める」という判断を残したままにしないことが、重大事故を減らす分かれ目になります。
保険で考えるべき備えと、自己負担になりやすい部分
事故が起きたあとに会社から出ていく負担は、治療費や見舞金だけではありません。
死亡事故では、遺族対応、現場停止への対応、調査対応、再発防止のための社内整備、場合によっては損害賠償請求への対応まで広がります。
ここで大切なのは、特定の保険名で判断するのではなく、まず役割で整理することです。
考え方としては、従業員災害への補償、会社の法律上の損害賠償責任への備え、第三者に対する法律上の損害賠償責任への備え の3つに分けると整理しやすくなります。
今回の事例で中心になりやすいのは、従業員災害への補償 と、場合によって論点となりうる 会社の法律上の損害賠償責任への備え です。
使用者賠償責任保険 は、こうした会社の法律上の損害賠償責任に備える保険として整理されますが、ここで大事なのは、その名前だけで判断しないことです。
重要なのは、従業員災害への補償、会社の法律上の損害賠償責任への備え、第三者被害への備え を分けて確認することです。
誰が被保険者なのか、どの事故が対象になるのか、法律上の損害賠償責任が前提なのか、支払限度額や免責金額はどうなっているのか を、それぞれ見ていく必要があります。
実際の補償範囲は、保険商品、特約、約款で異なるため、「名前が同じなら内容も同じ」とは考えないほうが安全です。
また、第三者に対する法律上の損害賠償責任への備えは、今回の事故そのものの中心論点ではありません。
ただし、建設業では、高所作業車の転倒や接触が、通行人、近隣建物、他社資材などへの被害に広がる場面 もあります。
会社全体のリスク管理としては、別枠で確認しておく意味があります。
保険は事故後の資金負担に備える仕組みであり、安全対策そのものの代わりにはなりません。
参考:厚生労働省 職場のあんぜんサイト
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/
よくある質問(FAQ)
A. そうとは限りません。
高所作業車の事故は、操作した人の行動だけでなく、作業計画、設置面の確認、教育、指示、異常時の中止判断など、現場全体の管理状況も検討対象になりやすい ためです。
A. まず、その機械の 作業床高さ を確認し、必要となる 教育区分 を見ます。
一般的な整理としては、作業床高さ10m以上は技能講習、10m未満は特別教育の対象です。
ここでは教育区分を簡潔に整理していますが、実務では「経験の有無」ではなく、その機械に応じた教育を受けているか を確認することが重要です。
A. まずは、従業員災害への補償、会社の法律上の損害賠償責任への備え、第三者被害への備え の3つを分けて整理することです。
保険名だけで判断するのではなく、被保険者の範囲、対象事故、支払限度額、免責金額、特約、約款 を個別に確認することが重要です。
※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。
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