天井裏の感電死亡事故

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延長コード破損だけで終わらせない安全管理

天井裏の感電死亡事故

  • 30秒でわかる要点まとめ

    ・ポイント:天井裏での感電死亡事故は、破損した延長コードだけでなく、点検工程の計画漏れ、仮設照明の不足、持込電気機器の点検不足、感電防止教育の不備が重なって発生することがあります。

    ・お読みいただきたい方:建設会社の経営者、工事責任者、安全管理担当者、協力会社管理を行う方

    ・リスクへの備え:点検・片付けまで含めた工事計画の作成、仮設照明の確保、延長コードや照明器具などの持込電気機器点検、不良機材の使用禁止ルール、感電防止教育、任意労災と使用者賠償責任補償の確認

    記事で分かること:点検工程、仮設照明、持込電気機器、安全教育、保険確認の5つの要点

    以下は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に掲載されている労働災害事例をもとに、建設会社・工事責任者向けに管理上の注意点を整理したものです。事例の詳細は出典をご確認ください。

    天井裏や設備裏の作業では、狭さ、暗さ、姿勢の制限が重なり、通常の床上作業では見逃さない不具合にも気づきにくくなります。感電事故は「電気工事だけの問題」ではなく、点検・片付け・仮設設備の管理不足からも発生し得る労災リスクです。特に延長コードや照明器具は日常的に使う道具であるため、危険源として軽く扱われやすい点に注意が必要です。

  • 事故は点検作業中に起きた

    厚生労働省の労働災害事例では、天井裏での点検作業中、破損した延長コードの充電部に接触して感電した死亡事故が紹介されています。

    この事例では、断熱材張替え後の点検作業が行われていました。張替え作業そのものは終わっていましたが、作業後の確認のため、作業員が天井裏に入り、持ち込んだ照明器具と延長コードを使って点検をしていたとされています。

    事例から実務上読み取れる管理上の論点は、点検工程が工事計画の中で十分に管理されていたか、照明を撤去した後も安全に点検できる明るさが確保されていたか、持込電気機器の損傷確認が行われていたか、感電リスクに関する教育が実施されていたかという点です。

    ここで重要なのは、事故が「本作業中」ではなく、点検や片付けに近い場面で起きている点です。経営側が本作業だけを危険作業として見ていると、点検、移動、片付け、仮設照明の切替えといった工程が管理の外に置かれます。死亡事故につながるリスクは、作業名ではなく、作業環境と手順の組み合わせで判断する必要があります。

  • 延長コード破損だけで終わらせない

    この事故では、破損した延長コードが直接の危険源になっています。ただし、経営管理の観点では「壊れたコードを使ったから事故が起きた」で終わらせると、再発防止策が浅くなります。

    見直すべき本質は、持込電気機器の点検、暗所作業の発生、点検工程の計画漏れ、感電防止教育の不足です。延長コードや投光器は現場で頻繁に使われる道具ですが、被覆の破れ、差込部の損傷、コードの圧迫、湿気の影響などが見過ごされると、重大な感電事故につながる可能性があります。

    低圧であっても、人体を通る電流の大きさ、通電時間、通電経路によっては重大な結果につながる可能性があります。特に、暗所や狭所では破損箇所を避けにくく、異常に気づくのも遅れやすくなります。「低圧だから大丈夫」「延長コードだから大丈夫」という判断は、感電リスクの評価として不十分です。

    労働安全衛生規則では、第2編第5章「電気による危険の防止」において、電気機械器具や配線等による感電防止に関する規定が置かれています。たとえば第333条では、対地電圧が150Vを超える移動式・可搬式の電動機械器具、または湿潤した場所・鉄板上・鉄骨上等の導電性が高い場所で使用する移動式・可搬式の電動機械器具について、漏電による感電を防止するため、感電防止用漏電遮断装置の接続が求められています。また、第336条では、延長コードなどの移動電線については、絶縁被覆が損傷・老化していることにより感電の危険が生じることを防止する措置を講じなければならないと定めています。今回の事故に直接関係する規定はこの第336条であり、破損した延長コードをそのまま使用しないこと、使用前の目視点検を徹底することが実務上の基本的な対応となります。ただし、条文を確認するだけで現場の安全が確保されるわけではありません。現場では、誰が、いつ、どの機材を点検し、不良品をどのように使用禁止にするのかまで決めておく必要があります。

    現場で確認したい項目
    ・点検、清掃、片付けまで作業計画に含めているか
    ・仮設照明を撤去するタイミングを決めているか
    ・撤去後に点検作業や是正作業が残らないか
    ・延長コード、投光器、電動工具の損傷確認を誰が行うか
    ・不良品を使用禁止として隔離するルールがあるか
    ・暗所、狭所、湿気のある場所で漏電遮断器や接地の確認をしているか
    ・協力会社の持込機器も確認対象にしているか

  • 保険で見るべき費用と限界

    死亡労災が発生した場合、労災保険による給付だけでなく、遺族対応、会社側の安全配慮義務に関する確認、労働基準監督署等への対応、元請・発注者への説明、社内の再発防止対応が必要になることがあります。会社に法律上の損害賠償責任が問われる場合には、損害賠償金や争訟費用が経営上の大きな負担になる可能性もあります。

    ここでいう任意労災とは、政府労災の上乗せ補償や、業務災害総合保険など、労災事故に備える民間保険を指します。名称や補償構成は保険会社・契約内容によって異なります。

    保険面では、任意労災の死亡補償、後遺障害補償、入院・手術・通院補償、休業補償、使用者賠償責任補償などが確認対象になります。ただし、実際の補償範囲や支払可否は、契約内容、特約、被保険者の範囲、事故状況、免責金額、支払限度額によって異なります。「労災事故なら任意労災で足りる」と決めつけず、死亡事故時の上乗せ補償と使用者賠償責任補償を分けて確認することが必要です。

    一方で、工期遅延に伴う追加費用、売上減少、受注機会の喪失、行政対応に伴う各種費用、再発防止のための追加費用、ブランド毀損への対応費用などは、任意労災や使用者賠償責任補償で当然に対象となるものではありません。保険で確認すべき費用と、会社が自己負担として想定すべき費用を分けて整理しておくべきです。

    執筆者の意見

    この事故は、感電リスクが延長コードの破損だけでなく、点検工程、照明確保、持込電気機器管理、安全教育の組み合わせで高まることを意味します。実務上は、本作業の安全対策だけでなく、点検後の片付けや仮設設備の切替えまで管理対象に含められるかが問われます。弊社は、死亡労災への備えは保険加入だけで完結せず、安全管理体制、協力会社管理、補償内容の確認を一体で見直すべきだと考えます。実務上は、死亡補償額だけでなく、使用者賠償責任補償の支払限度額、協力会社・下請作業員の扱い、争訟費用の範囲、事故後対応費用の有無を証券単位で確認することが重要です。

    ── 株式会社イカリエージェンシー 損害保険トータルプランナー

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  • よくある質問(FAQ)

    Q1. 感電事故は電気工事会社だけの問題ですか。

    A. いいえ。電気工事そのものではなくても、延長コード、投光器、電動工具、仮設電源を使う作業であれば、建築、内装、設備、清掃、点検などでも感電事故が発生する可能性があります。電気工事士が行う作業かどうかだけでなく、充電部への接触可能性、湿気、暗所、狭所、コード損傷の有無を確認する必要があります。

    Q2. 延長コードを毎回点検していれば十分ですか。

    A. 十分とはいえません。延長コードの点検は重要ですが、照明計画、作業手順、点検工程の有無、片付け時の電源切替え、感電防止教育まで含めて確認する必要があります。特に天井裏や設備裏のように視認性が低い場所では、破損箇所に気づきにくくなります。

    Q3. 死亡労災は任意労災でどこまで備えられますか。

    A. 任意労災では、死亡補償や後遺障害補償などが検討対象になります。会社の法律上の損害賠償責任に備える場合は、使用者賠償責任補償の有無や支払限度額も確認が必要です。ただし、補償範囲や支払可否は契約内容、特約、事故状況によって異なります。工期遅延、売上減少、行政対応に伴う各種費用、再発防止のための追加費用、ブランド毀損対応費用などは当然に対象となるものではありません。

    参考

    厚生労働省『職場のあんぜんサイト 労働災害事例 No.101157』(2026年6月閲覧)
    https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101157

    厚生労働省『職場のあんぜんサイト 感電 安全衛生キーワード』(2026年6月閲覧)
    https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo74_1.html

    デジタル庁『e-Gov法令検索 労働安全衛生規則』(2026年6月閲覧)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032

    最終確認日

    2026年06月06日

    ※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。

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承認日 :2026年6月9日

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