
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント
中小建設業の若手定着には、採用後のOJTを「現場任せ」にせず、担当者・教える順番・面談時期をあらかじめ決めておくことが必要です。
・お読みいただきたい方
新入社員や若手作業員を受け入れる現場代理人、職長、教育担当者、総務・労務担当者。
・リスクへの備え
最低限やることは、OJT担当者を1名決める、初週に教える内容を絞る、質問してよいタイミングを伝える、入社1か月以内に面談する、の4点です。
・記事で分かること
若手を放置しないためのOJT設計4つの手順。
見て覚えろでは定着しない
建設現場では、作業の流れや職人同士の距離感を見ながら覚える場面があります。それ自体は現場教育の一部です。ただし、新人に対して「見ていれば分かるはず」と任せきりにすると、本人は何を質問してよいのか分からず、危険な作業と雑務の区別もつきにくくなります。
特にGW明けは注意が必要です。入社直後の緊張が一段落し、「この会社で続けられるか」「自分は現場に必要とされているか」を本人が考え始めやすい時期だからです。ここで声かけが少ない、作業目的を説明されない、毎日違う人から違う指示を受ける状態になると、仕事そのものよりも不安が先に大きくなります。
厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査では、過去1年間に若年労働者がいた事業所のうち、「自己都合により退職した若年労働者がいた」事業所は全産業では40.9%とされています。また、若年正社員の定着のための対策を行っている事業所は73.7%で、対策内容では「職場での意思疎通の向上」が高い項目として示されています。若手定着は、本人の根性だけの問題ではなく、職場側の受け入れ体制の問題でもあります。
若手を放置しないためのOJTルール
OJTは、先輩の人柄や経験だけに頼ると属人化します。教え方が上手な人に当たれば伸びる一方で、忙しい現場に入ると放置される。この差が大きい会社では、若手が「自分だけ分かっていない」と感じやすくなります。
まず決めるべきは、OJT担当者の固定です。現場全員で見る意識は大切ですが、本人が相談する相手は1名に絞ります。担当者は、毎朝の作業前に「今日やること」、終業前に「分かったこと・困ったこと」を短く確認します。長い面談でなくても構いません。毎日3分でも、聞ける相手がいることが重要です。
次に、教える順番を標準化します。初日は会社ルール、安全上の禁止事項、現場内の動線、道具の置き場を中心にします。初週は清掃、材料運搬、写真撮影補助、先輩同行など、現場の流れを理解する作業に絞ります。2週目以降に、道具の名称、作業手順、品質確認、安全確認の意味を少しずつ教えます。いきなり成果を求めるのではなく、「分かる作業」を増やす順番にすることが、定着しやすい受け入れ体制づくりにつながります。
現場で使いやすいOJT確認項目は、次の4点です。
・OJT担当者を1名決め、本人に名前を伝えているか
・初週に教える内容と、2週目以降に教える内容を分けているか
・本人が質問してよいタイミングを決めているか
・入社1か月以内に、現場責任者または上長が面談しているか
教育担当を決めるだけでも、放置リスクは下げられる
教育担当を決める目的は、新人を甘やかすことではありません。現場の指示系統を分かりやすくし、放置と過干渉の両方を防ぐためです。新人は、複数の先輩から別々の言い方で注意されると、何が正解か分からなくなります。担当者を決めておけば、注意の内容を整理し、本人に必要な順番で伝え直すことができます。
入社1か月面談では、技術評価よりも先に、続けるうえでの不安を確認します。聞く内容は難しくありません。「朝、現場に来る前に不安が強い日はあるか」「誰に聞けばよいか分からない場面はあるか」「危ないと感じた作業はあるか」「思っていた仕事との違いはどこか」を確認します。ここで出た内容を、担当者と現場責任者で共有し、翌週からの教え方を調整します。
国土交通省・厚生労働省「建設業の人材確保・育成に向けて(令和8年度予算案の概要)」では、建設業の技能者について、60歳以上が約4分の1、29歳以下が約12%と示されています。あわせて、若者や女性の入職・定着の促進、処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体として進めることが重要とされています。建設業の人材不足は、採用人数だけで解決するものではありません。採った人が現場で学び続けられる仕組みを作ることが、中小建設業にとって現実的な人材確保策になります。
参考
厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-r05.html
厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況 統計表」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?fileKind=2&statInfId=000040209316
国土交通省・厚生労働省「建設業の人材確保・育成に向けて(令和8年度予算案の概要)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001642747.pdf
厚生労働省「建設業の人材確保・育成に向けた取組を進めていきます」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66280.html
よくある質問(FAQ)
固定した方がよいです。担当者が毎日つきっきりになる必要はありません。新人が「最初に誰へ聞けばよいか」を分かっている状態を作ることが目的です。担当者が不在の日は、代わりに確認する人を朝礼で伝えるだけでも放置防止になります。
作業の上達度だけでなく、不安、質問しにくい場面、人間関係、危険に感じた作業、体力面の負担を確認します。特に「分からないことはあるか」だけでは答えにくいため、「誰に聞けばよいか迷った場面はあるか」と具体的に聞く方が実態を把握しやすくなります。
技術が一番高い人とは限りません。新人の質問を遮らず、危険な作業と任せてよい作業を分けて説明できる人が向いています。忙しい現場では、技術指導役と相談窓口を分ける方法もあります。
※本記事中の統計数値は各調査の公表時点のものです。最新情報は各一次ソース(厚生労働省・国土交通省のウェブサイト)でご確認ください。
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