
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント:木材を積んだトラックを約1m後退させた際、固定されていなかった木材が右側へ落下し、運転席外側にいた作業者へ当たって死亡した事例です。
・お読みいただきたい方:木造建築、資材搬入、木材加工、荷下ろし作業を行う建設会社の経営者・現場責任者。
・リスクへの備え:短距離の車両移動でも荷を固定し、落下のおそれがある範囲へ人を入れず、作業計画・指揮者・誘導者・合図を事前に決めます。
・記事で分かること:死亡事故を招いた2つの原因と、厚生労働省が示す4つの再発防止策。
約1mの後退で木材が落下
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」No.390の事例です。
木造家屋建築工事業者の木材加工作業場に、最大積載荷重4トンのトラックで工事用木材が運ばれました。運搬時は木材が2か所でロープ掛けされ、荷台へ緊結されていましたが、荷下ろし作業を始める際に運転手がロープを解いています。
4人で木材を降ろし、5本目は重量があり従来の方法では滑らなかったため、前に降ろした4本を重ねて台にし、トラックを台へ近づける方法へ変更しました。
トラックを約1m後退させたところ、木材が突然右側へ落下し、運転席の外側に立っていた作業者へ当たりました。被災者は死亡しています。保護帽は着用していましたが、中央部がへこんだ状態で現場に残されていました。
原因は荷の未固定と危険範囲への立入り
厚生労働省が示す直接原因は2点です。木材を積載したトラックを動かす際、荷をロープ等で固定していなかったこと。そして、木材が落下するおそれのある範囲内に作業者が立ち入っていたことです。
再発防止策としては、次の4点が示されています。
この事例では、途中で荷下ろし方法を変更したことも重要です。方法を変更した時点で、車両移動と荷の状態を改めて評価し、固定・退避・合図をやり直す必要がありました。
方法変更時に一度止める仕組みを
荷下ろし作業では、最初に決めた手順がそのまま最後まで使えるとは限りません。荷が重い、置場が狭い、車両位置を変えたいといった状況が出たときこそ、作業を一旦止めて再計画する必要があります。
実務では、「車両を動かす前に荷は固定されているか」「落下範囲に人はいないか」「誰が誘導するか」「合図は何か」を車両移動前の固定確認項目にしておくと、作業方法の変更時にも同じ確認を繰り返せます。
死亡・負傷が業務上災害と認められる場合、政府労災の対象となり得ます。任意労災や使用者賠償責任補償も関係する可能性がありますが、対象者、補償項目、会社の法律上の損害賠償責任、支払限度額、事故状況などで取扱いは異なります。また、工期遅延や代替要員手配などの費用が当然に補償されるわけではありません。
この事故は、車両をわずかに動かす場面でも、荷の固定を解いたままでは落下事故につながることを意味します。実務上は、作業方法を途中で変更するときに「いったん止める」ルールを明確にしておくことが問われます。弊社は、荷下ろし作業では、距離の短さではなく荷が動く可能性でリスクを判断することが重要だと考えます。固定、立入禁止、誘導、合図の4点を車両移動前の確認に落とし込むことが経営者に求められます。

前田朗伸(まえだ あきのぶ)
株式会社イカリエージェンシー(1956年創業/AIG損保 AMA認定代理店)
損害保険トータルプランナー/AIG Executive Risk Manager(ERM)※AIG損保リスクマネジメント制度 最上位認定
建設業の労災・賠償・工事保険を専門に、実務15年以上。契約実績330社以上。
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よくある質問(FAQ)
A. いいえ。厚生労働省は、短距離の移動であっても荷の落下・荷崩れのおそれがある場合は、ロープ等で固定することを対策として示しています。
A. いいえ。この事例では被災者は保護帽を着用していました。保護具だけに頼らず、そもそも落下のおそれがある範囲へ立ち入らせないことが重要です。
A. いいえ。対象者、補償項目、支払限度額、特約、事故状況などで異なります。使用者賠償責任補償も、会社に法律上の損害賠償責任が生じるかなど個別事情により判断されます。
参考
厚生労働省 職場のあんぜんサイト『木材の引き降ろし作業中、木材が落下』(2026年10月閲覧)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/jirei/sai_000390.html
本記事は上記公開事例をもとに株式会社イカリエージェンシーが編集・要約し、独自の実務解説を加えて作成しています。
最終確認日:2026年10月04日
※掲載図は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明するためのイメージです。実際の補償範囲、支払可否、条件等は、契約内容や事故状況等により異なります。
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