治療と仕事の両立支援を社内ルールに

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申出から支援まで5段階で整える

治療と仕事の両立支援を社内ルールに

  • 30秒でわかる要点まとめ

    ・ポイント:2026年4月から、治療と仕事の両立支援に取り組むことが事業主の努力義務となり、厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」が適用されています。

    ・お読みいただきたい方:社員の私傷病、通院、復職、勤務配慮に対応する建設会社の経営者・人事労務担当者。

    ・リスクへの備え:本人からの申出を起点に、相談窓口、情報取得、主治医・産業医等の意見確認、就業上の措置、フォローアップまで社内手順を決めます。

    ・記事で分かること:両立支援を進める5段階と、会社が事前に整えておきたい4つの仕組み。

  • 2026年4月から事業主の努力義務

    2026年4月1日から、職場における治療と仕事の両立支援の取組は事業主の努力義務となりました。これに合わせて、厚生労働省は「治療と就業の両立支援指針」を公表しています。

    指針の対象となる両立支援は、私傷病を抱える労働者が治療を受けながら就業を継続できるよう、必要な就業上の措置や治療への配慮を行う取組です。

    支援は、原則として労働者本人からの申出を端緒に進めます。そのため会社には、相談窓口、申出方法、情報の取扱い、関係者の役割を事前に明確にし、社員が申し出やすい環境を整えておくことが重要です。

  • 申出から就業配慮まで5段階

    厚生労働省の指針を実務へ落とすと、次の5段階で整理できます。

    • 本人が会社へ両立支援を申し出る
    • 本人が会社の勤務情報を主治医へ伝え、就業継続に必要な情報を主治医から得て会社へ提出する
    • 主治医や産業医等の意見を踏まえ、就業継続の可否を検討する
    • 必要な就業上の措置や治療への配慮を決定し、必要に応じて両立支援プランを作成する
    • 治療経過や勤務状況を確認し、必要に応じて措置やプランを見直す

    就業上の措置には、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などが例示されています。治療への配慮としては、通院時間の確保などがあります。

    重要なのは、診断名だけを見て会社が一律に判断しないことです。症状、治療内容、仕事内容、現場の危険性などを踏まえ、主治医や産業医等の意見を確認しながら個別に決める必要があります。

  • 相談窓口と情報管理を先に決める

    社員から申出があってから対応方法を考えると、誰が情報を受け取るのか、上司へどこまで共有するのか、現場配置を誰が判断するのかが曖昧になりやすくなります。

    実務では、相談窓口、本人同意の取り方、主治医へ渡す勤務情報、社内で共有する範囲、就業措置の決定者、見直し時期までを事前に決めておくと対応しやすくなります。特に建設現場では、高所、重機、運転、夜間作業など仕事内容によって安全上の判断が変わるため、一般的な配慮だけでなく具体的な作業内容を主治医等へ伝えることが重要です。

    私傷病の治療に伴う休業や所得減少、代替要員費用などが発生しても、任意労災や賠償責任保険で当然に補償されるものではありません。福利厚生制度や所得補償に関する保険を導入している場合も、対象疾病、待機期間、給付条件などは契約ごとに異なります。制度と保険を分けて確認する必要があります。

    執筆者の意見

    この指針は、病名だけで就業可否を決めるのではなく、本人の申出と医学的意見、実際の仕事内容を組み合わせて判断することを意味します。実務上は、社員から相談を受けた後の対応より先に、誰が受付け、誰が判断し、誰まで情報を共有するかを決めておくことが問われます。弊社は、建設会社では「働けるか」だけでなく「どの作業なら安全に働けるか」を具体的に確認する仕組みが重要だと考えます。治療経過に応じて配慮内容を見直す前提で運用することが、長期的な就業継続につながります。

    前田朗伸(まえだ あきのぶ)

    株式会社イカリエージェンシー(1956年創業/AIG損保 AMA認定代理店)

    損害保険トータルプランナー/AIG Executive Risk Manager(ERM)※AIG損保リスクマネジメント制度 最上位認定

    建設業の労災・賠償・工事保険を専門に、実務15年以上。契約実績330社以上。

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  • よくある質問(FAQ)

    Q1. 会社は病気の社員を必ず就業させなければならないのですか?

    A. いいえ。指針は、本人の申出や主治医・産業医等の意見、仕事内容などを踏まえて就業継続の可否や必要な措置を検討する枠組みです。安全配慮を含め、個別に判断する必要があります。

    Q2. 本人から申出がなければ何もしなくてよいですか?

    A. 支援は本人からの申出を端緒とするのが基本ですが、会社側には申出しやすい環境を整えることが重要です。相談窓口、社内ルール、情報の取扱いをあらかじめ明確にしておく必要があります。

    Q3. 主治医の診断書があれば、その内容どおりに働かせればよいですか?

    A. 一律ではありません。主治医からの医学的情報に加えて、実際の仕事内容や職場環境を踏まえ、産業医等の意見も聴いたうえで会社が就業上の措置を検討します。

    参考

    厚生労働省『治療と就業の両立支援指針』(2026年10月閲覧)
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75ac0780&dataType=0&pageNo=1

    厚生労働省『治療と仕事の両立について』(2026年10月閲覧)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115267.html

    最終確認日:2026年10月04日

    ※掲載図は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明するためのイメージです。実際の補償範囲、支払可否、条件等は、契約内容や事故状況等により異なります。

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