
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント:橋げたの剥離剤をシンナーで拭き取る作業中、蓋を外した4L缶が倒れ、流れ落ちたシンナーが下方の照明器具で着火し、養生シートへ燃え移った事例です。
・お読みいただきたい方:橋梁補修、塗装、清掃、改修工事でシンナーなど引火性のある溶剤を使用する建設会社の経営者・現場責任者。
・リスクへの備え:使用時以外は容器の蓋を閉め、足が当たらない位置へ置き、照明器具など着火源を近辺や下方から外します。
・記事で分かること:事故につながった3つの配置・管理ミスと、現場で固定したい4つの確認項目。
4L缶が倒れ照明器具で着火
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に掲載されたヒヤリ・ハット事例です。
作業者は吊り足場上で、橋げたの鋼表面に付着した剥離剤を、シンナーを含ませたウエスで拭き取っていました。作業中、蓋を外していた4Lのシンナー缶に足が当たり、缶が転倒。シンナーが足場下方へ垂れ落ち、下方に設置されていた照明器具によって着火しました。火は足場の養生シートへ燃え移り、作業者が火傷しそうになっています。
実際に負傷者が出た災害ではなく、重大事故になり得たヒヤリ・ハットとして公表されています。したがって、この記事でも「火傷事故が発生した」とは扱わず、着火から負傷へ進む直前で止まった事例として整理します。
原因は3つの配置・管理ミス
厚生労働省が示している原因は明確です。容器の状態、置き場所、着火源の位置が同時に悪条件となっていました。
・シンナー缶の蓋を外したままにしていた
・足が当たる場所にシンナー缶を置いていた
・着火源となる照明器具をシンナー缶の真下に置いていた
ポイントは、作業者の「注意」だけに依存しないことです。足場のように作業空間が限られる場所では、容器を倒しにくい位置へ固定し、液体がこぼれた場合にどこへ流れるかまで見ておく必要があります。照明器具を含め、着火源となり得る設備を溶剤の近辺・下方へ置かない配置ルールが欠かせません。
火気管理を作業手順に組み込む
厚生労働省が示す対策は、使用時以外はシンナー缶の蓋を閉めること、足が当たるおそれのある場所に置かないこと、着火源になる物を近辺や下方に置かないことです。
実務では、これを「作業者が気をつける」で終わらせず、作業開始前に容器置場を決める、照明・電動工具などの位置を確認する、使用後すぐ蓋を閉める、こぼれた場合の初動を周知するといった手順へ落とし込む方が再現性があります。特に吊り足場では、上でこぼれた液体が下へ流れることを前提に上下方向の危険源も確認したいところです。
火災によって工事対象物や第三者財物へ損害が生じた場合、工事保険や賠償責任保険が関係する可能性はありますが、対象財物、事故原因、補償範囲、免責金額、特約などで取扱いは異なります。また、工期遅延に伴う追加費用、営業損失、行政対応費用などは、これらの保険で当然に対象となるものではありません。契約内容を事故前に確認する必要があります。
この事例は、シンナー缶の転倒だけではなく、容器の開放状態と着火源の配置が重なったことで火災につながったことを意味します。実務上は、危険物を扱う場所を決めるだけでなく、こぼれた液体がどこへ流れるかまで含めて設備配置を確認することが問われます。弊社は、火災リスクのある作業では、保険の確認と同時に「容器をどこに置くか」「下方に何があるか」を作業前に固定することが重要だと考えます。作業者の注意力に依存せず、配置と手順で事故の連鎖を切ることが経営者に求められます。

前田朗伸(まえだ あきのぶ)
株式会社イカリエージェンシー(1956年創業/AIG損保 AMA認定代理店)
損害保険トータルプランナー/AIG Executive Risk Manager(ERM)※AIG損保リスクマネジメント制度 最上位認定
建設業の労災・賠償・工事保険を専門に、実務15年以上。契約実績330社以上。
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よくある質問(FAQ)
A. いいえ。厚生労働省は「火傷しそうになった」ヒヤリ・ハット事例として掲載しています。着火し、養生シートへ燃え移りましたが、公開資料上は負傷事故として整理されていません。
A. それだけではありません。公表資料では、缶の置き場所と、下方の照明器具という着火源の位置も原因として挙げています。容器管理と設備配置を一体で確認する必要があります。
A. 必ずではありません。対象財物、事故原因、契約内容、特約、免責金額などにより異なります。第三者財物の損害では賠償責任保険が関係する場合もあるため、契約ごとの確認が必要です。
参考
厚生労働省 職場のあんぜんサイト『橋げたの剥離剤拭き取り作業中、足場上のシンナー缶が倒れ、シンナーが照明器具に垂れ落ちて着火し、火傷しそうになった』(2026年10月閲覧)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0396.html
本記事は上記公開事例をもとに株式会社イカリエージェンシーが編集・要約し、独自の実務解説を加えて作成しています。
最終確認日:2026年10月04日
※掲載図は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明するためのイメージです。実際の補償範囲、支払可否、条件等は、契約内容や事故状況等により異なります。
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