
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント:「500万円未満」「一式工事の許可あり」「下請に任せている」といった表面的な条件だけで判断すると、許可・施工体制・契約の判断を誤るおそれがあります。
・お読みいただきたい方:元請・下請を問わず、見積、受注判断、下請発注、契約確認に関わる建設会社の経営者・管理者
・リスクへの備え:受注時と変更時に、請負代金の算定、許可業種、下請契約総額、実質的な施工関与、契約書面を同じ確認項目で再点検します。
・この記事で分かること:国土交通省の令和8年3月FAQから、現場実務で誤解しやすい5つの判断ポイント
許可の金額判定で誤解しやすい2点
国土交通省は2026年3月、「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」を公表しています。
内容を見ると、建設会社が日常的に使う「500万円」「特定建設業」といった言葉にも、判断を誤りやすいポイントがあります。
誤解1 500万円未満なら無許可で請けられる
建築一式工事以外では、工事1件の請負代金が500万円未満であれば、原則として建設業許可を必要としない「軽微な建設工事」に該当します。
ただし、ここで見るのは契約書に記載された工事代金だけではありません。
請負代金には消費税・地方消費税を含みます。また、注文者から材料の支給を受ける場合は、その材料の市場価格等を加えて判定します。同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負う場合も、正当な理由に基づく分割を除き、各契約の請負代金を合計して判断します。
たとえば工事代金だけを見ると500万円未満でも、発注者から支給される材料を加えた結果、500万円以上となり、許可が必要になる場合があります。
なお、建築一式工事は基準が異なり、工事1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事が「軽微な建設工事」とされています。
誤解2 大きな工事を受注すれば特定建設業許可が必要になる
特定建設業許可は、元請の受注額そのものだけで判定する制度ではありません。
発注者から直接請け負った1件の工事について、下請契約の代金の合計が5,000万円以上、建築一式工事では8,000万円以上となる場合に、特定建設業許可が必要です。
逆に、発注者から直接受注した工事の金額が大きくても、下請へ発注する金額がこの基準に達しなければ、それだけを理由に特定建設業許可が必要になるわけではありません。また、自社が下請として工事を受注している場合も、この特定建設業許可の金額判定とは区別して考える必要があります。
特定建設業許可の判定軸は、元請として直接受注した工事の下請契約総額です。
受注額だけを見て「一般でよい」「特定が必要」と判断せず、誰から受注した工事なのか、下請へいくら発注するのかまで確認する必要があります。
一式工事と一括下請負の落とし穴
誤解3 一式工事の許可があれば専門工事も自由に施工できる
土木一式工事や建築一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を建設する工事です。
そのため、建築一式工事の許可を持っているからといって、電気工事、管工事、内装仕上工事などの専門工事を無条件で自社施工できるわけではありません。
一式工事の許可は、専門工事を無条件で自社施工できる許可ではありません。
一式工事に含まれる専門工事を自ら施工する場合、その専門工事が建設業許可を必要とする規模であれば、原則として当該専門工事について主任技術者と同等の資格を持つ「専門技術者」を工事現場に置く必要があります。現場の主任技術者や監理技術者が必要な資格を備えていれば、専門技術者を兼ねることもできます。
専門技術者を配置できない場合は、その専門工事の許可を受けた建設業者へ下請発注する必要があります。
一方、一式工事に含まれる専門工事が500万円未満(税込)の軽微な建設工事に当たる場合は、この専門技術者の配置義務の対象外です。
つまり、「建築一式の許可があるから建築関係なら何でも自社施工できる」と考えるのではなく、専門工事の内容、金額、自社施工か下請施工かを確認して判断する必要があります。
誤解4 下請へ任せても技術者を置いていれば丸投げにはならない
一括下請負、いわゆる「丸投げ」は、単に下請へ出した金額や割合だけで判断されるものではありません。
元請では、施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導などについて、自ら実質的に関与しているかが重要になります。
技術者を置いているだけでは「実質的に関与している」とは限りません。
国土交通省の通達では、現場に技術者を配置しているだけで、施工計画や工程、品質、安全などの管理を実際には下請へ任せきりにしている場合、実質的な関与が認められない可能性が示されています。
ただし、一括下請負には適用範囲の違いがあります。公共工事では全面的に禁止されています。民間工事では原則禁止ですが、共同住宅を新築する工事を除き、元請負人があらかじめ発注者から書面による承諾を得た場合には適用除外となることがあります。
個別工事が一括下請負に該当するかは、具体的な施工実態を踏まえて許可行政庁が判断します。「自社社員の技術者がいるから問題ない」と形式だけで判断しないことが重要です。
追加工事は後で書面化、では遅い
誤解5 追加工事は金額確定後にまとめて変更契約すればよい
工事中に追加・変更が発生しても、金額や工期をすぐに確定できないことはあります。
しかし、「金額が決まっていないから、いったん施工して後から契約を直す」という進め方でよいわけではありません。
国土交通省の令和8年3月FAQでは、元請・下請間で追加工事等の内容をすぐに確定できない場合について、追加・変更工事の着工前に必要事項を書面で取り交わす対応が示されています。
また、発注者・受注者間についても、国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」の対象となる取引では、内容を直ちに確定できない場合に同様の対応が示されています。
具体的には、追加工事等の着工前に次の事項を書面で明確にし、内容が確定した後は遅滞なく変更契約等の手続きを行います。
・追加工事等として依頼する具体的な作業内容
・追加工事等が契約変更の対象となること、および契約変更等を行う時期
・追加工事等に係る契約単価の額
追加工事は、金額が未確定でも着工前に必要事項を書面化することが重要です。
原契約についても、建設業法第19条に基づく必要事項を確認し、着工前に契約内容を書面で明確にしておくことが基本です。契約書を作成しない場合や必要な記載事項が不足する場合には、必要に応じて行政から指導等が行われることがあります。
見積、契約、工期変更に関する改正後の実務は「改正建設業法後の見積・契約・工期の直し方」でも整理しています。
建設業法違反に伴う行政対応や取引上の不利益は、一般的な賠償責任保険等で当然に補償されるものではありません。補償の有無は契約内容、特約、事案の状況によって異なります。
法令違反後の保険対応を前提にするのではなく、受注時、下請発注時、変更工事発生時の確認ルールで防ぐことが重要です。
このFAQは、許可、施工体制、契約の判断が「金額だけ」「許可証があるかだけ」「技術者がいるかだけ」では完結しないことを意味します。
実務上は、受注時に請負代金、支給材料、下請契約総額を確認し、施工前には許可業種、施工への関与方法、契約書面を別々に点検する運用が問われます。
弊社は、法令違反を防ぐうえで重要なのは担当者の記憶ではなく、受注時と変更時に同じ確認項目を通す仕組みを持つことだと考えます。
誰が確認し、判断に迷ったときに誰へ照会するのかまで社内ルールに落とし込むことが、実務上は欠かせません。

前田朗伸(まえだ あきのぶ)
株式会社イカリエージェンシー(1956年創業/AIG損保 AMA認定代理店)
損害保険トータルプランナー/AIG Executive Risk Manager(ERM)※AIG損保リスクマネジメント制度 最上位認定
建設業の労災・賠償・工事保険を専門に、実務15年以上。契約実績330社以上。
あわせて確認しておきたい記事
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https://www.e-kojihoken.com/basic/column/post-41/
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https://www.e-kojihoken.com/basic/column/post-45/
よくある質問(FAQ)
A.必ずしもそうではありません。同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負う場合、正当な理由に基づいて契約を分割したときを除き、各契約の請負代金を合計して軽微な建設工事に該当するかを判断します。建築一式工事以外では、消費税や支給材料の市場価格等も含めて500万円未満かを確認する必要があります。
A.個別の施工実態によって判断されます。元請が施工計画、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導などに実質的に関与しているかが重要です。公共工事では一括下請負は全面禁止です。民間工事では原則禁止ですが、共同住宅の新築工事を除き、発注者から事前に書面による承諾を得た場合には適用除外となることがあります。個別判断に迷う場合は許可行政庁への確認が必要です。
A.施工後まで何も書面化しない進め方は避ける必要があります。元請・下請間では国土交通省FAQにより、追加・変更内容をすぐ確定できない場合でも、具体的な作業内容、契約変更の対象であることと変更時期、契約単価などを追加工事等の着工前に書面で取り交わし、内容確定後に変更契約等へ反映する対応が示されています。発注者・受注者間についても、国土交通省ガイドラインの対象取引では同様の対応が示されています。
参考
国土交通省『建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問』(2026年8月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001985869.pdf
国土交通省『建設業許可事務ガイドライン』(2026年8月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001860019.pdf
国土交通省 北陸地方整備局『建設業者のための建設業法』(2026年8月閲覧)
https://www.hrr.mlit.go.jp/kensei/sangyo/kensetsu/kyoka/200326kensetugyousahnotamenokensetugyouhou.pdf
国土交通省『一括下請負の禁止について』(2026年8月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/common/001203447.pdf
国土交通省『発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)』(2026年8月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001979929.pdf
国土交通省『元請負人と下請負人間における建設業法令遵守ガイドライン』(2026年8月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000188.html
最終確認日
2026年08月21日
※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。
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