
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント:専任義務がなくなったわけではなく、一定の要件をすべて満たす場合に限り、主任技術者・監理技術者等の兼任範囲が広がりました。
・お読みいただきたい方:複数現場の受注判断や技術者配置を担う建設会社の経営者・配置担当者
・リスクへの備え:請負代金、現場数、移動時間、下請次数、連絡員、ICT環境、資格・雇用関係を受注前と契約変更時に確認
・この記事で分かること:今回押さえたい3つの仕組みと8つの判断項目
専任と兼任の境界を整理
2024年12月13日から、情報通信機器の活用など一定の条件を満たす場合に、主任技術者・監理技術者が専任を要する現場を兼任できる「専任特例1号」が設けられました。同時に、営業所技術者等が一定の専任現場を兼務できる制度も始まっています。
一方、各現場に監理技術者補佐を専任配置し、監理技術者が2現場を兼任する「専任特例2号」は従来からある制度です。今回の改正後も、専任特例1号とは別の仕組みとして利用できます。
ここで注意したいのが、「監理技術者を置く基準」と「主任技術者・監理技術者を専任にする基準」は別であることです。
発注者から直接工事を請け負った特定建設業者が、下請契約の請負代金総額5,000万円以上、建築一式工事では8,000万円以上となる工事を施工する場合は、主任技術者に代えて監理技術者を置きます。
これに対し、公共性のある施設や多数の人が利用する施設などに関する工事で、請負代金が4,500万円以上、建築一式工事では9,000万円以上となる場合は、主任技術者または監理技術者の専任が原則です。請負代金だけを見て、監理技術者の配置基準と専任基準を混同しないよう注意が必要です。
これらの金額は、原則として消費税・地方消費税を含む請負代金で判断します。注文者から材料が支給される場合は、その市場価格や必要に応じた運送費を加えて判定します。基準額に近い工事では、契約書に記載された金額だけで判断すると配置区分が変わる可能性があります。
また、「専任」とは、他の工事現場に関する職務を兼務せず、その工事現場の職務に継続して従事することです。必ずしも一日中現場に滞在する「常駐」と同じではありませんが、自由に他の現場を担当できるという意味でもありません。
今回押さえたい3つの仕組み
本記事では、2024年12月の制度改正に関係する専任特例1号、営業所技術者等の専任現場兼務と、従来からある専任特例2号を取り上げます。
このほかにも、密接な関係にある複数工事を同一の専任主任技術者が管理する取扱いや、一定の複数契約を一つの工事とみなす取扱いがあります。技術者が複数工事を担当できる仕組みが、今回取り上げる3つだけというわけではありません。
専任特例1号は、主任技術者と監理技術者の双方が対象です。次の要件をすべて満たす場合に限り、専任を要する現場を兼任できます。
・各工事の請負代金が1億円未満、建築一式工事は2億円未満であること
・兼任する工事現場が合計2つ以下であること
・現場間を1日の勤務時間内に巡回でき、通常の移動手段による片道の移動時間がおおむね2時間以内であること
・自社が注文者となった下請契約から数えて、下請次数が3次までであること
・主任技術者または監理技術者との連絡その他必要な措置を補助する連絡員を各工事に置くこと。土木一式工事または建築一式工事では、その工事の種類について1年以上の実務経験を有する者を置くこと。なお、連絡員に専任・常駐は求められず、同一人が複数工事の連絡員を兼ねることも可能です
・現場作業員の入退場など、施工体制を遠隔で確認できる仕組みを設けること
・人員の配置計画書を作成し、工事現場への備置きと営業所での保存を行うこと
・映像と音声を送受信できるスマートフォン、タブレット、Web会議システムなどを利用できる環境が確保されていること
専任特例1号を利用する現場と専任を要しない現場を組み合わせる場合も、専任を要しない現場について請負代金以外の要件を満たし、担当する工事現場の合計を2つ以下にしなければなりません。
工事途中の増額により請負代金が1億円以上、建築一式工事では2億円以上となった場合や、下請次数が3次を超えた場合は、それ以降、専任特例1号を利用できません。次の契約変更時まで待つのではなく、工事ごとに主任技術者または監理技術者を専任配置する必要があります。
専任特例2号では、各現場に監理技術者補佐を専任で置くことにより、監理技術者が2現場まで兼任できます。主任技術者には利用できません。
なお、監理技術者補佐には、対象工事の主任技術者資格と指定された一級技術検定の第一次検定合格、または対象工事の監理技術者資格など、法令上の資格要件があります。単に補助担当者を配置すればよいわけではありません。
監理技術者は、補佐を配置した後も施工管理の責任を負います。工事内容、工事現場間の距離、施工管理上必要となる会議や立会いなどを踏まえ、各現場の適正な施工を確保できる範囲で利用する必要があります。
また、同一の監理技術者または主任技術者が、専任特例1号を利用する現場と専任特例2号を利用する現場を兼務することはできません。
営業所技術者等が専任現場の主任技術者または監理技術者を兼務する場合は、基本的に専任特例1号と同じ要件を満たす必要があります。
具体的には、請負代金が1億円未満、建築一式工事では2億円未満であること、下請次数が3次までであること、連絡員、施工体制を確認する情報通信技術、人員の配置計画書、映像・音声通信環境などが必要です。
専任特例1号と異なるのは、兼務できる専任現場が1つまでであり、移動時間を営業所から現場までで判断すること、その営業所で請負契約を締結した工事に限られることです。人員の配置計画書には、技術者が所属する営業所と、工事の契約を締結した営業所の名称も記載します。
営業所技術者等が工事現場の主任技術者または監理技術者を兼務する場合は、所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることも必要です。
一般建設業の営業所技術者が兼務できるのは、資格要件を満たす主任技術者の職務です。特定建設業の特定営業所技術者は、資格要件に応じて主任技術者または監理技術者の職務を兼務できます。
営業所技術者等が専任現場の主任技術者または監理技術者を兼務する場合、その現場で専任特例1号または専任特例2号を併用し、さらに別の工事現場を担当することはできません。
配置ミスを防ぐ社内確認
兼任を採用する場合は、技術者の氏名や請負代金だけで判断せず、適用する制度、資格要件、監理技術者資格者証・講習の要否、会社との直接的かつ恒常的な雇用関係、現場数、移動時間、下請次数、連絡員、ICT環境、発注者の契約条件を工事ごとに確認します。
専任特例1号や営業所技術者等の専任現場兼務を利用する工事では、人員の配置計画書を作成します。
計画書には、技術者の1日当たりの労働時間のうち、労働基準法上の法定労働時間を超える時間の見込みと実績のほか、工事名、所在地、工事内容、請負代金、移動時間、下請次数、連絡員の氏名・所属会社・必要な実務経験、施工体制を確認する情報通信技術、使用する情報通信機器などを記載します。
計画書は工事現場に備え置き、帳簿と同じ保存期間(原則5年)、営業所で保存する必要があります。兼任可否の確認記録を工事ごとに残すことが重要です。
工事の増額や追加下請が決まった段階で再判定しなければ、受注時には要件を満たしていても、工事途中から不適切な配置になる可能性があります。
受注判定表と人員の配置計画書は、営業部門と工事部門だけでなく、建設業許可、技術者資格、雇用関係を管理する担当者も確認できる体制にしておく必要があります。
発注者側の入札公告、特記仕様書、契約条件で兼任の取扱いが定められている場合もあります。法令上の要件だけで判断せず、発注条件まで照合してください。受注前や契約変更時の確認については、「改正建設業法後の見積・契約・工期の直し方」もあわせて確認しておきたいところです。
技術者の配置違反そのものに伴う行政対応費用、技術者交代費用、工期の組み直し、工期遅延に伴う追加費用、売上減少、ブランド毀損対応費用などは、保険で当然に対象となるものではありません。配置ミスを保険で補うのではなく、受注前と契約変更時の確認で防ぐことが基本です。
配置ミスが施工事故などにつながり、第三者に対する法律上の損害賠償責任が発生した場合は、第三者賠償責任保険などの検討対象となる可能性があります。ただし、補償対象となるかどうかは契約内容、特約、事故原因、事故状況によって異なります。
この制度変更は、専任が必要な工事でも、定められた要件をすべて満たす場合に限って技術者の兼任が可能になったことを意味します。
実務上は、受注時点だけでなく、工事途中の増額、追加下請、連絡員や通信環境の変更まで追跡できる体制が問われます。
弊社は、兼任可否を技術者個人の判断に任せず、受注判定表と人員の配置計画書を別の担当者が確認する運用が必要と考えます。
実務上は、要件を外れた時点で専任配置へ切り替えられるよう、代替となる技術者の資格と配置状況を事前に確認しておくことも欠かせません。

前田朗伸(まえだ あきのぶ)
株式会社イカリエージェンシー(1956年創業/AIG損保 AMA認定代理店)
損害保険トータルプランナー/AIG Executive Risk Manager(ERM)※AIG損保リスクマネジメント制度 最上位認定
建設業の労災・賠償・工事保険を専門に、実務15年以上。契約実績330社以上。
あわせて確認しておきたい記事
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よくある質問(FAQ)
A.1億円未満という金額条件だけでは兼任できません。現場数、移動時間、下請次数、連絡員、施工体制を確認する情報通信技術、人員の配置計画書、映像・音声通信環境など、専任特例1号の要件をすべて満たす必要があります。技術者本人の資格要件や会社との雇用関係も別途確認が必要です。
A.専任現場との兼務は1現場までです。その営業所で請負契約を締結した工事であることや、営業所から現場までの移動時間がおおむね2時間以内であることに加え、請負代金、下請次数、連絡員、ICT環境、人員の配置計画書など、基本的に専任特例1号と同じ要件を満たす必要があります。
A.続けられません。請負代金が1億円以上、建築一式工事では2億円以上となった場合や、下請次数が3次を超えた場合は、それ以降、専任特例1号を利用できません。要件を外れることが判明した段階で、専任配置への切替えが必要です。
参考
e-Gov法令検索『建設業法』(2026年7月閲覧)
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
国土交通省『監理技術者等の専任義務の合理化・営業所技術者等の職務の特例』(2026年7月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk1_000001_00038.html
国土交通省『現場技術者の専任合理化』(2026年7月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001854111.pdf
国土交通省『監理技術者制度運用マニュアル』(2026年7月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001859191.pdf
国土交通省『建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問』(2026年7月閲覧)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001985869.pdf
最終確認日
2026年07月25日
※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。
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