
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント
建設現場の資材盗難は、盗まれた資材代だけでなく、再仕入れ費用、工期調整、保険請求資料の不足まで含めて会社の損失になります。
・お読みいただきたい方
資材置き場に電線、鋼材、設備部材、仮設材などを保管する建設会社の経営者、役員、工事責任者の方。
・リスクへの備え
休工日前後の在庫確認、保管場所の施錠・撮影、盗難発生時の警察届出、納品書・請求書・再仕入れ見積書の保存ルールを社内で決めておくことが重要です。
・記事で分かること
資材盗難で確認すべき「4つの実務ポイント」
休工明けに電線ケーブルがなくなっていた事例
あるマンション新築工事で、休工日前に資材置き場へ保管していた電線ケーブルが、休み明けの朝になくなっていることが確認されました。盗難が疑われたのは、VVFケーブルやCVTケーブルなど複数種類の電線資材です。工事そのものが止まるほどの大規模事故ではありませんが、見込み損害額は数十万円規模となり、再仕入れの見積書、納品書、請求書の明細、資材置き場の写真、警察への届出番号などをそろえる対応が必要になりました。
この種の事故で会社が見落としやすいのは、「盗まれたこと」だけを説明しても、損害額の確認には足りない点です。保険会社や関係者が確認するのは、いつ、どこに、何が、どれだけあり、いくらで仕入れ、盗難後にいくらで再調達したのかという流れです。つまり、事故対応は現場の記憶ではなく、書類と写真で説明できる状態にしておく必要があります。
特に電線や金属資材は、種類、長さ、メーカー、単価が分かれます。同じ「ケーブル盗難」でも、VVF、CVT、太さ、メートル数が曖昧になると、損害額の確認に時間がかかります。休工日前の時点で在庫表や写真が残っていない場合、「本当にその数量が置かれていたのか」という確認で止まりやすくなります。
資材盗難で利益が削られる理由
資材盗難の損失は、単に「資材を買い直せば終わり」ではありません。盗まれた資材の元の仕入金額と、事故後に再仕入れする金額が一致するとは限らないためです。市況、納期、仕入先、緊急手配の有無によって、再調達費用が上がることがあります。一方で、保険や損害確認の場面では、元の請求単価、納品単価、再仕入れ見積額の整合性を確認されることがあります。
ここで問題になりやすいのが、材料費に利益が含まれている場合です。元請や発注者向けの請求書に記載された単価と、実際の仕入原価は同じではないことがあります。事故対応では、被害にあった資材の実損を確認するため、材料屋からの見積書や納品書、請求書明細の提出を求められることがあります。利益部分まで当然に損害として扱われるとは限らないため、保険確認では「何を基準に損害額を算定するのか」を早めに整理する必要があります。
また、免責金額が設定されている契約では、認定された損害額から免責金額が差し引かれることがあります。臨時費用などの費用保険金が関係する契約もありますが、支払可否や計算方法は契約内容と事故状況によって変わります。したがって、事故後に見るべきなのは「盗難も対象か」だけではなく、保険の対象物、保管場所、保険期間、支払限度額、免責金額、必要書類、費用保険金の有無です。
休工日前後に会社で決めておきたい管理ルール
資材盗難を完全に防ぐことは難しいですが、休工日前後のルールを決めておくことで、被害の抑止と事故後の説明力は上げられます。実務上は、休工前の最終確認と休工明けの初回確認をセットで運用するのが現実的です。休工前に資材の種類、数量、保管場所、施錠状況を確認し、日付が分かる写真を残す。休工明けには、作業開始前に資材置き場を確認し、異常があれば移動や片付けをする前に写真を撮る。この流れを現場任せにせず、会社の標準手順にしておくことが重要です。
確認項目は複雑にしすぎると続きません。最低限、次の4点は決めておくべきです。
1つ目は、資材置き場に置くものと置かないものの基準です。高額資材、小型で持ち出しやすい資材、転売されやすい金属資材は、屋内保管や別管理を検討します。
2つ目は、休工前の写真撮影です。資材全体、型番やラベル、数量が分かる状態、門扉や施錠状況を残します。
3つ目は、盗難発覚時の初動です。警察への届出、現場写真、盗難品リスト、関係者への報告、保険会社または代理店への連絡順を決めておきます。
4つ目は、損害額を説明する資料です。納品書、請求書明細、元の仕入単価、再仕入れ見積書、再購入後の請求書を保存します。
国土交通省関東地方整備局の資料「資材置場及び工事現場等の『盗難』防止の強化について」でも、資材置場や工事現場等で工事用資機材や発生品の盗難が多発しているとして、盗難防止の強化対策例が示されています。これは民間会社に一律の義務を課すものではありませんが、保管期間の短縮、保管場所の選定、外部から見えにくい保管、門扉・錠前の強化、防犯カメラ、定期確認、日付入り写真の記録などは、現場管理の参考になります。刑法上、他人の財物を窃取した者は窃盗罪(刑法235条)の対象です。
参考
国土交通省 関東地方整備局「資材置場及び工事現場等の『盗難』防止の強化について」
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000893434.pdf /
国土交通省 関東地方整備局「工事現場等の盗難対策」
https://www.ktr.mlit.go.jp/gijyutu/gijyutu00000012.html / e-Gov
法令検索「刑法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045
よくある質問(FAQ)
まず前提として、盗難が補償対象になるかどうかは、保険種類、保険の対象物、保管場所、保管状態、特約の有無によって変わります。建設工事保険、火災保険、動産を対象にする補償など、契約内容によって確認先が変わります。資材が工事目的物に含まれるのか、仮設材や支給材なのか、保管場所が保険の対象場所に入っているのかによって扱いが変わるため、証券、明細、特約、保険の対象物を確認する必要があります。
盗難事故では、警察への届出内容や受理番号の確認を求められることがあります。支払可否は契約内容と事故状況によりますが、盗難を客観的に説明する資料として、警察届出、現場写真、盗難品リスト、関係者の確認記録は重要です。
再仕入れ価格が損害額の確認資料になることはあります。ただし、元の仕入原価、請求単価、再仕入れ見積額、利益部分、免責金額などを分けて確認されることがあります。特に、材料費に利益が上乗せされている場合は、保険上の損害額と請求書上の金額が一致しない可能性があります。
資材盗難は、事故発生後に資料を集め始めると時間がかかります。休工日前の写真、数量確認、施錠記録、納品書の保存があれば、事故後の説明はかなり変わります。保険でどこまで確認できるかは契約内容によって異なりますが、会社としては「盗まれた後に困らない証拠を、盗まれる前に残す」ことを標準化しておくべきです。
※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。
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