
30秒でわかる要点まとめ
・ポイント
若手の早期離職は本人要因だけでは説明できず、入社直後の受入れ設計の影響が大きい論点です。
・お読みいただきたい方
建設会社の経営者、役員、採用責任者、工事部門責任者の方です。
・リスクへの備え
配属初日の説明、教育担当の固定、1週目・1か月目・3か月目の面談、相談ルート、任せる作業範囲を先に決めてください。現場任せの受入れをやめることが出発点です。
・この記事でわかること
4つの設計ポイント。初期離職を招く受入れ不全の正体、建設会社で崩れやすい体制、3か月で差がつく運用手順、経営側が見るべき確認項目です。
なお、本稿でいう「入社初期3か月」は、厚生労働省の公的統計区分をそのまま指すものではありません。就職後3年以内離職率などの公表資料を背景に、入社初期の受入れ不全を点検しやすくするための実務上の管理期間として置いています。公的統計の中心は新規学卒者ですが、受入れ設計の論点は若年の未経験採用にも共通するため、本稿ではあわせて扱います。
なぜ入社初期3か月の受入れ設計を点検すべきなのか
このテーマを4月に扱う意味はあります。新卒入社が集中しやすく、受入れ体制の差が表面化しやすい時期だからです。ただし、建設会社では未経験中途採用も多いため、ここで述べる受入れ設計は通年採用にも応用できます。厚生労働省の公表資料では、新規学卒者の就職後3年以内離職率が継続的に示されており、建設業も若年定着を後回しにできない状況です。令和4年3月卒の就職後3年以内離職率は、建設業で高卒28.6%、大卒30.5%でした。
さらに、建設雇用改善計画では、建設業は高年齢層の割合が高く、若年層の割合が低いこと、新規学卒者の入職が少なく定着が悪い状況が深刻化していることが整理されています。つまり、採用人数だけを増やしても、入口の受入れが粗ければ人は残りません。ここでいう「3か月」は、公的統計が示す特定期間ではなく、受入れ不全が表面化しやすい初期管理の単位として置いています。
厚生労働省の若年者定着関連資料では、事業主に対し、入職前後の情報ギャップを減らすこと、計画的なOJT・OFF-JTを実施すること、職場定着のために必要な情報提供や相談機会を確保すること、配置その他の雇用管理に配慮することが求められています。本稿は、こうした原則を建設会社の受入れ実務に落とし込んで整理するものです。
若手が辞めやすい会社に共通する受入れ不全
まず崩れやすいのは初期配置です。人手不足の現場では、入社直後から即戦力の穴埋めとして配属し、経験や理解度を見ずに現場投入しがちです。しかし、若年者の定着支援で求められているのは、本人に必要な情報を与えずに慣れさせることではなく、能力や経験に応じて育成し、配置にも配慮することです。未経験者を繁忙現場に放り込み、見て覚えろで回すやり方は、教育ではなく消耗になりやすい運用です。
次に崩れやすいのは教育担当です。担当者を名目だけ置き、実際には日替わりで違う人が教える会社では、教える内容も基準もぶれます。厚生労働省資料は計画的なOJT・OFF-JTや能力開発を求めていますが、現場実務に置き換えると、教育担当が固定されず教え方が人によって変わる状態は、その趣旨に反します。何を、誰が、どこまで教えるのかが曖昧な会社ほど、若手は自分ができているのか判断できなくなります。
さらに見落とされやすいのが相談機会です。定着しない会社ほど、面談を評価確認と混同します。しかし、若手定着では、困りごとを小さい段階で拾えるかどうかが重要です。厚生労働省資料でも、相談や必要な情報提供の機会確保が重視されています。建設業では、現場の人間関係、指示の受け方、安全面の不安、体力負担、将来像の不透明さが初期の不安になりやすく、これを拾えない会社は、退職理由を最後に聞いて終わります。問題は退職届の時点ではなく、その前の受入れ過程にあります。
入社初期3か月の受入れを、建設会社ではどう設計するか
経営者向けに整理すると、受入れ管理で最低限押さえるべき論点は4つです。第一に、初期配置の基準を作ることです。未経験者をどの現場に、どの負荷まで、どの作業範囲で入れるかを決めます。第二に、教育担当を固定することです。主担当を1人決め、補助担当を付ける場合も役割を分けます。第三に、節目面談の時期を決めることです。建設会社の実務では、入社1週目、1か月目、3か月目に節目を置いて確認する運用が組みやすく、受入れ不全の早期把握に向いています。第四に、記録を残すことです。教えた内容、任せた作業、本人の不安、配置調整の要否を短くても記録します。本稿では、厚労省資料が示す情報提供、計画的OJT・OFF-JT、配置への配慮という原則を、建設会社の受入れ実務に落とした運用案として整理しています。
実務で回す順番は、入社前に配属予定現場、担当上司、教育担当、最初の2週間で経験させる作業、任せない作業を決めることから始まります。初日には会社ルール、安全、勤怠、相談先、評価の見方、3か月の育成予定を説明します。1週目では仕事内容の理解、人間関係、安全不安、体力負担、説明とのギャップを確認します。1か月目では配置の適否と教育担当との相性を見直し、3か月目では本配属継続か、現場変更か、教育内容追加かを判断します。ここまで標準手順として決めておけば、毎年同じ失敗を言語化しやすくなります。
建設雇用改善計画は、若年者の入職促進だけでなく、定着促進、能力開発、雇用管理改善、魅力ある労働環境づくりを政策課題として掲げています。したがって、若手定着は採用広報の延長ではなく、経営管理の一部として扱うべきです。採用数を増やす前に、受入れの標準手順を整える方が先です。
参考
厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
厚生労働省「若年者雇用対策関係公表資料一覧」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jakunen/jakunensha-houdou.html
厚生労働省「建設雇用改善計画」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123001.html
厚生労働省「定着等に関する参考資料」
https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000641152.pdf
よくある質問(FAQ)
一部には適性の問題もあります。ただし、それだけでは説明しきれません。厚生労働省資料でも、入職前後の情報ギャップを減らすこと、能力や経験に応じた育成、相談機会の確保、配置への配慮が求められています。採用時の見極めだけで定着が決まるわけではなく、受入れ設計の影響は無視できません。
十分とは言い切れません。現場責任者だけだと、評価確認と相談が混ざりやすく、本音が出にくいからです。少なくとも入社初期は、直属上司とは別に、採用責任者や総務、工事部門責任者などが状況確認する方が安全です。相談経路を一本化しない方が、初期の不安を拾いやすくなります。これは、相談や必要な情報提供の機会確保という厚労省資料の趣旨に沿う運用です。
最初に着手しやすいのは、教育担当の固定と、1週目・1か月目・3か月目の節目確認の標準化です。入社初期の離職では、教え方のばらつき、相談しにくさ、配置のミスマッチが離職要因になりやすいためです。受入れ手順が決まっていない会社では、採用人数を増やしても同じところで崩れます。先に責任者と確認時期を固定した方が、体制の弱点を把握しやすくなります。
いちばん危ないのは、人手不足を理由に、入社初期3か月を現場の善意と本人の適応力に丸投げすることです。建設会社の若手定着は、採用の巧拙だけでなく、受入れをどこまで標準化できるかで差がつきます。
※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。
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