クーラー配線工事で感電死亡

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活線作業の6要因を現場で塞ぐ

クーラー配線工事で感電死亡

  • 30秒でわかる要点まとめ

    ・ポイント:クーラー配線工事で、200Vの既設電線を活線のまま切断しようとした作業者が感電し、1人が死亡した事例です。

    ・お読みいただきたい方:電気工事を請け負う建設会社の経営者、工事責任者、安全衛生担当者。

    ・リスクへの備え:可能な限り停電して作業し、やむを得ず低圧活線作業を行う場合は、絶縁用保護具または活線作業用器具の使用、工具・保護具の点検、作業手順の明確化まで一体で管理します。

    ・記事で分かること:死亡事故につながった6つの要因と、作業前に確認したい5つの対策。

  • 200V活線を切断しようとして感電

    厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に掲載されたNo.399の事例です。

    工場の窓枠を下方へ拡張する工事に伴い、窓枠の約20cm下にあったクーラーの電源用電線管を撤去し、約1m下へ新たな電線管を敷設していました。既設電線と新設電線を切り替える際、作業者が分岐箱内の既設電線を200Vの活線のまま電気工事用ペンチで切断しようとして感電し、死亡しました。

    作業者はゴム底の安全靴と長袖作業服を着用していましたが、手は素手でした。使用していたペンチは絶縁柄でしたが、絶縁被覆には1~4mmの穴が4か所ありました。当日は気温27℃で蒸し暑く、朝からの作業で作業服は発汗によりかなり湿っていたとされています。

    公表資料には、作業者は在職1年で電気工事士の資格を有していなかったとも記載されています。ただし、厚生労働省が示す事故原因6項目には資格の有無は挙げられていません。資格がなかったことだけを事故原因と決めつけず、実際に重なった作業上・管理上の要因を見る必要があります

  • 事故を招いた6つの要因

    厚生労働省が示す原因は、単に「活線に触れた」だけではありません。事故までに複数の防護が失われていました。

    ・停電せず、活線のまま作業したこと

    ・活線作業に伴う危険性を事前に検討しなかったこと

    ・絶縁用保護具を使用せず、素手で作業したこと

    ・ペンチの絶縁被覆が損傷していたこと

    ・発汗で作業服が湿り、接触抵抗が低下していたこと

    ・作業者に感電の危険性を十分理解させていなかったこと

    労働安全衛生規則346条は、低圧の充電電路を取り扱う作業で感電のおそれがある場合、事業者に対し、労働者へ絶縁用保護具を着用させるか、活線作業用器具を使用させることを求めています。

    この事例で重要なのは、一つのミスではなく、停電、手順、保護具、工具点検、作業環境、教育という複数の防護が同時に機能しなかった点です。

  • 停電と保護具を作業前ルールに

    厚生労働省は、この事例の対策として、電気工事は可能な限り停電して行うこと、活線作業を行う場合は事前に危険性を検討して作業手順を作ること、絶縁用保護具を使用すること、活線作業用器具や保護具を点検すること、発汗などで身体や衣服が濡れる状況では特に感電防止を徹底することなどを示しています。

    現場では「短時間だから」「絶縁柄の工具だから」といった判断で活線作業へ進まない仕組みが必要です。停電の可否、検電、通電禁止の表示、保護具、工具の状態、単独作業の回避、救急時の連絡方法までを作業前確認に落とし込むと、属人的な判断を減らせます。

    感電による死亡・傷害が業務上災害と認められる場合は、政府労災の給付対象となり得ます。これに加えて任意労災や使用者賠償責任補償を付けている会社では、補償対象者、死亡・後遺障害の補償内容、使用者の法律上の損害賠償責任に対する補償、支払限度額などを確認しておく必要があります。保険金の支払可否は契約内容、特約、事故状況等により異なります。また、工期遅延による追加費用や行政対応費用などは、任意労災や使用者賠償責任補償で当然に対象となるものではありません。

    執筆者の意見

    この事故は、200Vの活線を切断したという行為だけでなく、保護具、工具点検、手順、教育まで複数の防護が抜けていたことを意味します。実務上は、作業者個人の注意力より先に「停電できない場合は誰が承認するか」「何を確認しなければ作業開始できないか」を会社の手順として固定することが問われます。弊社は、重大事故を減らすには、保険確認と同時に、事故前の作業ルールが書面で運用されているかを確認することが重要だと考えます。事故後の補償確認だけでなく、作業前に止められる仕組みを持つことが経営者に求められます。


    前田朗伸(まえだ あきのぶ)

    株式会社イカリエージェンシー(1956年創業/AIG損保 AMA認定代理店)

    損害保険トータルプランナー/AIG Executive Risk Manager(ERM)※AIG損保リスクマネジメント制度 最上位認定

    建設業の労災・賠償・工事保険を専門に、実務15年以上。契約実績330社以上。

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  • よくある質問(FAQ)

    Q1. 低圧なら活線作業をしても大きな事故にはなりにくいですか?

    A. いいえ。厚生労働省の事例では200Vの活線作業で死亡事故が起きています。低圧であっても感電のおそれがある作業では、法令に基づく保護具や活線作業用器具などの対策が必要です。

    Q2. 絶縁柄のペンチを使えば、素手でも大丈夫ですか?

    A. そうとは限りません。この事例では絶縁柄ペンチの被覆が損傷していました。工具の名称だけで安全と判断せず、絶縁用保護具の使用や使用前点検を含めて管理する必要があります。

    Q3. 任意労災に加入していれば感電事故の費用はすべて補償されますか?

    A. いいえ。対象者、補償項目、特約、支払限度額、事故状況などで異なります。使用者賠償責任補償も、会社に法律上の損害賠償責任が発生するかなど個別事情によって判断されます。

    参考

    厚生労働省 職場のあんぜんサイト『クーラーの配線工事中に感電する』(2026年9月閲覧)
    https://anzeninfo.mhlw.go.jp/jirei/sai_000399.html

    e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』第346条(低圧活線作業)(2026年9月閲覧)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032

    最終確認日:2026年09月28日

    ※掲載図は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明するためのイメージです。実際の補償範囲、支払可否、条件等は、契約内容や事故状況等により異なります。

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