掘削工事の地盤崩壊事故と会社の備え

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重機と作業員が近接する現場で、会社が先に決めるべき備えを整理します。

掘削工事の地盤崩壊事故と会社の備え

  • 30秒でわかる要点まとめ

    ・ポイント
    掘削工事中の地盤崩壊事故は、現場の不注意だけでなく、重機の作業範囲、作業員の立入管理、地山や周辺状況の確認、土止め・土留めの計画、監督体制を会社として決めていたかが問われる事故です。

    ・お読みいただきたい方
    下水道工事、管工事、外構工事、造成工事などで、バックホウや土止め材を使う建設会社の経営者・役員の方。

    ・リスクへの備え
    施工前に地山や周辺状況の確認、重機と作業員の分離、誘導者の配置、土止めの計画、事故時の報告経路、任意労災や使用者賠償責任補償の有無を確認しておくことが重要です。

    ・記事で分かること
    掘削工事の崩壊事故で会社が確認すべき5つの管理ポイント

  • 掘削現場では「重機事故」と「崩壊事故」が重なることがある

    下水道工事で汚水管を埋設している場面を想定します。バックホウで埋戻しや砂投入をしていたところ、足元の地盤が崩れ、機械が前方に傾く。その先には土止めの内側で作業していた作業員がいて、バックホウのバケットや土止め支保工の部材との間に挟まれる。このような事故は、単なる重機との接触事故ではありません。

    問題は、重機の作業半径に作業員がいたことだけではなく、足元地盤の崩れをどこまで予測していたか、土止め内の作業と重機作業を同時に行う手順が妥当だったか、監督者が危険な位置関係を止められる体制だったかにあります。つまり、事故の原因は一つではなく、施工計画、地山・周辺状況の確認、作業区画、合図・誘導、現場監督の判断が重なって表面化します。

    経営者側が見るべき点は、「誰がミスをしたか」だけではありません。より重要なのは、危険な作業の組み合わせを会社として把握し、現場任せにしない仕組みがあったかです。重機と人が近接する作業は、慣れた現場ほど危険が見落とされやすくなります。

  • 会社が先に決めるべき安全管理の線引き

    掘削工事では、現場ごとに土質、地下水、埋設物、土止めの状態、重機の設置場所が変わります。そのため、毎回同じ手順で安全を確保できるとは限りません。特に、埋戻し作業や管の据付作業では、重機の動きと人の作業が近づきやすくなります。

    会社として最低限決めておきたいのは、次のような線引きです。

    ・バックホウの旋回範囲、前進方向、バケット下に作業員を入れない基準

    ・土止め内で作業する人と、重機作業を同時に進める場合の停止・合図ルール

    ・地盤の沈下、ひび割れ、湧水、土止め支保工の変形が見えたときの中止判断

    ・元請、下請、職長、オペレーター、誘導者の役割分担

    ・事故発生時に、救助、通報、元請報告、保険会社連絡を誰が行うか

    ここで大切なのは、書類を作ること自体ではありません。現場で「危ないので一度止める」と言える判断基準を、会社が事前に与えているかです。KY活動や安全ミーティングも、一般的な声かけで終わると効果が薄くなります。「今日の掘削深さ」「重機の位置」「土止め内に入るタイミング」「地盤が崩れた場合の退避方向」まで落とし込む必要があります。

  • 保険で見るべき範囲と、自己負担になりやすい部分

    作業員が業務中にケガをした場合、まず労災保険の対象となるかを確認します。ただし、労災保険だけで会社側の経済的負担がすべて整理されるとは限りません。死亡事故や後遺障害が残る事故では、法定外補償、遺族対応、使用者責任を問われた場合の損害賠償、弁護士費用、工事遅延による追加費用などが問題になります。

    任意労災では、死亡補償保険金、後遺障害補償保険金、入院補償保険金、手術補償保険金、通院補償保険金などが検討対象になります。さらに、会社の安全配慮義務違反などが争点になる場合に備え、使用者賠償責任補償の有無、支払限度額、免責金額、被保険者の範囲を確認しておく必要があります。

    現場周辺の第三者、発注者の財物、隣接物、埋設管などに損害が出る場合は、請負業者賠償責任保険を中心に、施設賠償責任保険、生産物賠償責任保険など、第三者への対人・対物賠償に関係する補償の確認が必要になります。工事そのものや施工中の資材に損害が出る場合は、建設工事保険や組立保険の検討領域になります。ただし、どの保険も事故状況、契約内容、特約、免責条項、保険期間、記名被保険者や被保険者の範囲によって判断が変わります。

    会社としては、事故が起きてから保険証券を探すのでは遅いです。掘削工事を受ける前に、少なくとも「作業員のケガ」「会社への賠償請求」「第三者への対人・対物事故」「工事目的物や資材の損害」の4分類で、どの保険に関係するかを整理しておくべきです。

    参考
    厚生労働省「職場のあんぜんサイト:労働災害事例」
    https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/sai/saigai_index.html

    厚生労働省「労働安全衛生規則」
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74003000&dataType=0

    厚生労働省労働基準局長通知「土止め先行工法に関するガイドラインの策定について」(平成15年12月17日付け・基発第1217001号)※国土交通省ウェブサイトに掲載のPDF
    https://www.mlit.go.jp/tec/sekisan/sekou/pdf/tuutatu016.pdf

    ※本記事は、上記の公的資料を参考に、掘削工事における地盤崩壊・重機近接作業・保険確認の実務上の注意点を一般向けに整理したものです。

  • よくある質問(FAQ)

    Q1. 掘削工事の事故は、任意労災だけ確認すれば足りますか。

    足りない可能性があります。作業員本人への上乗せ補償だけでなく、会社が損害賠償請求を受ける場合に備え、使用者賠償責任補償の有無や支払限度額も確認する必要があります。

    Q2. 元請の保険があれば、下請側は何もしなくてよいですか。

    そうとは限りません。元請の契約で下請業者やその作業員がどこまで被保険者に含まれるかは、契約内容によって異なります。自社の保険と元請の保険の両方を確認し、事故時の連絡先も整理しておくべきです。

    Q3. 事故防止で最初に見直すべき点はどこですか。

    重機と作業員の近接作業をどこまで許すかです。掘削内で人が作業している間は重機を止めるのか、誘導者を置くのか、土止めや地山に異常があれば誰が中止を判断するのかを、現場ごとの判断にしないことが重要です。「人が入っている間は重機を動かさない」という原則を置くことが重要です。例外を認める場合だけ、誘導者・合図・退避位置・中止基準を明確にする運用が必要です。

     

     

    ※本コラムに掲載している図解は、一般的な仕組みや考え方をわかりやすく説明することを目的としたイメージ図です。具体的な補償範囲、支払可否、条件等は各契約内容および事故状況等により異なります。

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